業務日誌(2004年7月その2)

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7月28日 とある依頼者との訣別

 本日、ある依頼者と2年近くに及んだ依頼関係を終結させることになりました。

 その依頼者は、例によってサラ金・クレジット会社からヤミ金まで手を出し、事業者でない方としては、とんでもないレベルの額の債務を背負って私のところに相談にやってきました。通常の感覚を持った弁護士であれば、まず間違いなく破産を勧めるところです。

 ところがその依頼者は、破産を勧める私に大変抵抗を見せました。通常であれば、破産以外には解決の見込みのない場合、依頼者が破産以外の処理を望んでも、それは解決の見込みがない以上、引受はしません。しかし、この方の場合には少々異なる事情がありました。というのは、別な弁護士に依頼している別件の裁判が高裁に係属中で、しかも一審では勝訴してまとまった額の給付判決を得ているとのことなのです。仮に高裁でも勝訴し、実際に回収ができれば、債務の何割かは返済が可能になる金額です。

 そこで私はやむを得ず、とりあえず任意整理の方針をとりました。といっても、通常の任意整理のように、3年程度での分割弁済の案が出せるわけはありません(債権者によっては、30年分割とかいう非現実的な案になってしまう)ので、事情を正直に説明し、「裁判で勝訴し回収ができた際には新たな提案をする」ことを条件に和解に応じてもらえるよう、債権者を説得したのです。

 こうして放置プレイのヤミ金(彼らには返すことはタブーです)を除き、一般債権者の7割は一応和解に応じてもらえましたが、のこる3割は和解できないままでした。そうこうしているうちに、高裁判決がでましたが、何と依頼者が認容された金額は一審に比べて大幅に減ってしまいました。

 目論見が狂ったために、私は依頼者に「債務を返せる見込みがなくなった以上、これ以上破産を避けて裁判を続けるメリットはなくなってしまった。破産したらどうか」と説得しましたが、依頼者は相変わらず破産に対して抵抗し続けました。

 ここで痛感したのが、私がいくら「これは暫定的な債務整理で、いずれ破産するかどうかを迫られるよ」と注意しておいても、依頼者の方は和解ができてしまうと、そんなことは殆ど覚えていないということです。中途半端な処理はやはり鬼門だなあと思いました。

 結局、依頼者の最高裁判決が出るのを待って、これ以上任意整理を勧められる見込みがないと言うことを理由に辞任せざるを得ませんでしたが、辞任させてほしいという説得をするためだけに、4回ほどの打ち合わせを要するという泥沼に近い状態になりました。




7月27日 夜顔

夜顔  朝顔に続いて夜顔も開花しました。これも私が帰ってくる時分には多少しおれ気味になってしまいますが。
















7月24日 館山の夕焼け

館山の夕焼け
 何ともロマンチックなタイトルをつけてしまいましたが、例年のごとく、水泳部合宿シーズンの始まりということで、昨晩遅くから千葉は館山の合宿所に来ています。

 本日は、合宿中使用する飛び込み台=脚立の海中設置です。2年前の日誌http://www5c.biglobe.ne.jp/~toyosaki/020723.htmにも書きましたが、脚立は1トン以上ある代物で、これを陸上で半日がかりで組み立て、人力で海の中に運び、ロープと杭、滑車を使って人力で引っ張って立てるという作業でして、今までは毎年2日がかりでしたが、今年は現在使用している脚立を建造してから7年目にして初めて一日以内に立てるところまで成功しました。

 こういう作業に携わると痛感するのが、「机上の空論」では解決しないという厳然たる事実です。元々素人が人力で作業できる限界に近い難易度の作業であることに加え、海という自然は微妙に毎年コンディションが異なり、ある年に教訓を得たと思って次の年はその教訓を踏まえて作業をしても、必ずまた何か想定外の事態が起こって立ち往生する、という事の繰り返しです。これに対しては、結局のところ経験を重ねることと、なにか起こっても動じないだけの余裕と謙虚さを持つことしか対策はないのかも知れません。

 写真は脚立立ての作業が無事終わって眺める館山の夕焼けです。




7月21日 桜蔭女VS開成男

 と言う名の特集がAERAで組まれていました。昨年の東大法学部卒後10年調査http://www5c.biglobe.ne.jp/~toyosaki/0305b.htm#030514に続き、自分につながる記事なので買って読みましたが、どうも自分の水泳部関係の同期と後輩が2名出ていて苦笑。おかげで水泳部と水泳学校の話題が掲載されているのはありがたい話ですが。

 マスコミ流の「まとめ」でいうと、開成は「運動会の結束」「現実感覚」「資格や高め安定志向」だそうです。うーん、微妙なところですね。

 確かに開成時代における「成功体験」というのは、成績の良さではなくて、運動会で組責や応援団長をやったことのようです。

 しかし、自分は埼玉の片田舎から偶々開成中に合格し、中高6年間片道1時間半かけて通学しましたが、遠距離通学をものともしないパワーを身につけたと言う面もあった一方、やはり通学時間の長さにスポイルされている部分も存在したようで、学校付近の下町や都内北部から通う一群の生徒たちのパワーには体力的に勝てませんでした。そうした余裕のなさと生来の付き合い下手から、実は開成時代の友人がそれほど多く残っていません(なので水泳部の仲間が非常に貴重な存在です)。わりと一匹狼的孤立感を味わっていた時期もあります。そんな私ですので、あまり「結束」というキーワードで括られることには抵抗があります。

 ただ、当時の開成は、高3の受験直前期を除き、「勉強は運動会や部活や遊びの片手間にやるもの」という風潮があり、「バカになれる者」が偉いという価値観がありました(この感覚が残っていることが、私が未だに水泳部に通い続けている理由の一つです)。入った大学や就職先は結果の一つに過ぎず、評価される人格は他の部分にある。こういう開成が続いているとすれば、希望はあります。




7月17日 住友信託銀の交渉差止申請は認められるか

 http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/kinyu/news/20040717k0000m020103000c.html
 UFJホールディングス(HD)と三菱東京フィナンシャル・グループ(FG)が16日、経営統合の交渉入りを正式発表したことを受けて、住友信託銀行は同日、経営統合の交渉禁止を求める仮処分を東京地裁に申請し、受理された。

 突然の三菱東京・UFJ合併話にどんな裏があったのかは知りませんが、私個人としても東京三菱とUFJの口座を使い分けていたので釈然としないものがあります。ましてやUFJ信託銀を売ってもらうはずだった住友信託銀は怒心頭でしょう。

 しかし、差止仮処分が認められるかというと、ちょっと話が異なります。住友信託銀の申請の根拠は、両行の基本合意書中の「当事者以外の第三者とは交渉しない『独占交渉権』」にあるようですが、「交渉権」は、あくまで交渉を行う権利であって、最終的に合併契約締結を請求できる権利ではありません。仮に裁判所が差し止め請求を認めてUFJ信託銀に「まず住友信託銀と交渉せよ」と命令したところで、交渉をまとめる気のないUFJ信託銀が形ばかりの交渉を済ませて「交渉不調」の結論を出すとの手順が加わるだけのように思えます。

 従って「独占交渉権」の規程があろうとも、損害賠償請求権の根拠にはなっても差し止め請求の根拠にはなりにくいのではないかと思われます。




7月16日 朝顔


 テラスのプランターに種をまいた朝顔が、猛暑でもう花を咲かせました。しかし、こう暑いと咲いてもすぐに萎れてしまいます。