和歌と俳句

古今和歌集

離別歌

在原行平
立ち別れいなばの山の峯におふるまつとし聞かば 今かへりこむ

よみ人しらず
すがる鳴く秋のはぎはら 朝たちて旅行く人を いつとか待たん

よみ人しらず
かぎりなき雲ゐのよそにわかるとも 人を心におくらさむやは

小野千古が母
たらちねの親のまもりとあひそふる心ばかりは せきなとゞめそ

きのとしさだ
けふ別れあすはあふみと思へども 夜やふけぬらん 袖の露けき

きのとしさだ
かへる山ありとはきけど 春霞 たちわかれなば恋しかるべし

紀貫之
惜しむから恋しきものを 白雲のたちなむのちは なに心地せむ

在原しげはる
別れてはほどをへだつ思へばや かつ見ながらにかねて恋しき

いかごのあつゆき
思へども身をしわけねば めに見えぬ心を君にたぐへてぞやる

なにはのよろづを
逢坂の関しまさしきものならば あかずわかるゝ君をとゞめよ

よみ人しらず
唐衣たつ日はきかじ 朝露のおきてしゆけばけぬべきものを


あさなけに見べききみとし頼まねば 思ひ立ちぬる草まくらなり

よみ人しらず
えぞしらぬ 今心みよ 命あらば 我やわするゝ人やとはぬと

ふかやぶ
雲ゐにもかよふ心のおくれねば わかると人に見ゆばかりなり

よしみねのひでをか
白雲のかなたかなたへたちわかれ 心をぬさとくだくたびかな

貫之
白雲のやへにかさなるをちにても 思はんひとに心へだつな

貫之
わかれてふ事は色にもあらなくに 心にしみてわびしかるらむ

みつね
かへる山 なにぞはありてあるかひは 来てもとまらぬ名にこそありけれ

みつね
よそにのみ恋ひやわたらん 白山の ゆきみるべくもあらぬわが身は

貫之
音羽山こだかくなきて 郭公 きみがわかれををしむべらなり