和歌と俳句

古今和歌集

雑躰歌

さかしらに夏はひとまね 笹の葉のさやぐ霜夜をわがひとりぬる

平中興
逢ふことの今ははつかになりぬれば 夜ふかからでは月なかりけり

左のおほいまうちぎみ時平
もろこしの吉野の山にこもるとも おくれむと思ふわれならなくに

なかき
雲はれぬ浅間の山のあさましや 人の心を見てこそやまめ

伊勢
難波なる長柄の橋もつくるなり 今はわが身をなににたとへむ

まめなれどなにぞはよけく 刈る萱の乱れてあれどあしけくもなし

おきかぜ
なにかその名の立つ事の惜しからむ 知りてまどふは我ひとりかは

くそ
よそながらわが身にいとのよるといへば ただいつはりにすぐばかりなり

さぬき
ねぎ事をさのみ聞きけむやしろこそ はてはなげきの森となるらめ

大輔
なげきこる山とし高くなりぬれば つらつゑのみぞまづつかれける

なげきをばこりのみつみて あしひきの山のかひなくなりぬべらなり

人恋ふる事を重荷とになひもて あふごなきこそわびしかりけれ

宵のまに出でて入りぬるみか月の われて物思ふころにもあるかな

そゑにとてとすればかかり かくすれば あな言ひ知らず あふさきるさに

世の中の憂きたびごとに身を投げば 深き谷こそ浅くなりなめ

在原元方
世の中はいかにくるしと思ふらむ ここらの人に恨みらるれば

何をして身のいたづらに老いぬらむ 年のおもはむ事ぞやさしき

おきかぜ
身はすてつ 心をだにもはふらさじ つひにはいかがなると知るべく

千里
白雪のともにわが身はふりぬれど 心は消えぬものにぞありける

梅の花さきての後の身なればや すきものとのみ人のいふらむ

みつね
わびしらにましらな鳴きそ あしひきの山のかひある今日にやはあらぬ

世をいとひ木のもとごとにたちよりてうつぶしぞめの麻のきぬなり