Road to FRANCE(その7)

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■■ サッカーパブ『焼肉リョウ』 ■■

11/16(日)今夜の3位決定戦は『焼肉リョウ』でTV観戦予定。
打ち合わせも兼ねてオージ、ヒロと昼食。
マレーシア行きを諦めたチャカポコへTEL。南葛で一緒に観戦を勧める。

  「帰って来いよぉ。最後の締めだぜぇ・・・」
  「無理だよ、勘弁してくれ」

風邪が悪化したため来られないとのこと。
何だよ〜ったく。這ってでも来るぐらいの気合いを見せろよなぁ・・・
カズも奥さんの外出禁止令のため『焼肉リョウ』へは来られないとの事。
俺は幸い妻の理解がありサッカーに関しては至って協力的だ。
サッカーに対する想いを一番近くで感じ、今では妻もすっかりサッカー
フリークだ(笑)

イカレ隊隊長(チャカポコ)と会長補佐(カズ)が来られないのは痛い。
果たして『焼肉リョウ』でサッカー観戦ができるのだろうか?
ただの飲み会になる位ならアパートで観てた方がよっぽどましだ・・・
でももう後には引けない。みんなに連絡が回っている。

夕方、オージの大画面TVを『焼肉リョウ』へ運び込んでセッティング
完了。試合開始を待つばかりとなった。

21時集合、総勢17人。
今日はマッちゃんがイカを着ている(笑)
マスターは半分呆れ顔。

  「まさかうちの店でサッカー観戦をやるとは思わなかったよ」

そりゃそうだろう。
きっと南葛でこんな事をやる奴は他にいないだろう。マスターにはいい
迷惑かも知れない。でも今日だけは許して、なるべく静かにしてるから。
試合開始直前、ウーさんがちゃかす。

  「さぁ演歌の花道に回そうか」

今ひとつうけない。飲み会と化す事を心配していた不安は解消された。
純粋にサッカーを観たい、日本をサポートしたいと思っているのは俺と
オージだけじゃぁないんだ・・・


■■ 日本vsイラン(マレーシア):アジア地区予選3位決定戦 ■■

  11/16 日本 3−2 イラン  [ジョホールバル(マレーシア)]

ジョホーバル(マレーシア)のスタジアムは蒼く染まっている。
2万2千人収容のスタジアムの9割方は日本のサポーターだ。この中に
レッズ命もいる。心強い。

11/16(日)日本時間22時。日本サッカー界の運命を賭けた戦いの
幕がきって落とされた。
注目のスタメンFWはカズと中山。体調不良の呂比須は控えに回った。
開始早々、イランDFのオウンゴールと思われたがオフサイドで取り消さ
れる。

日本の調子はいい。強気の岡田采配、4−4−2の布陣で運動量が豊富だ。
プレスが効く。選手のモチベーションも高いようである。
静かだった『焼肉リョウ』も日本のリズムにあわせるかのように次第に盛
り上がりを見せてくる。そして酔っぱらいオージが口火を切った。

  「ニッポン!ニッポン!」
  「アーレーアレー、アレアレアニッポーン」

静かにしてるつもりが、みんなで大合唱(笑)
そして中山の一発!ゴンゴール。ニッポン先制(1−0)

  「オーナカヤマ、ナカヤマナカヤマ、ゴンゴール」

盛り上がる。焼肉屋がまさにサッカーパブ状態。
前半は危ない場面もあったが概ね日本のペースで終了。

  「行ける。行けるよ」

ハーフタイムは競技場同様、トイレが混雑。俺は店の外へ出てヒロの駐車
場で立ちション。(恥)

後半開始1分、井原のクリアミスからアジジにやられた(1−1)。
昨日まで怪我を装っていたアジジ、どういうことだ・・・くっそ〜
後半13分、今度はアリ・ダエイにヘッドを決められ逆転される(1−2)
秋田がヘッドで負けたのだ。
頭を抱え沈黙。4年前の悲劇が甦る・・・頼む何とかしてくれ!

ここで岡田監督が動いた。中山→城、カズ→呂比須。
ついにカズが替わった。親善試合を除く国際Aマッチでは初めてだろう。
再び日本のペースとなる。イランはかなり消耗しているようだ。
城と呂比須が掻き回す。北沢も名波も中田も必死に食らいつく。

  「頑張れ、頑張れ、大丈夫だぁ」

そしてついに城がやった。起死回生のヘッド炸裂。(2−2)
スタジアムが歓喜の渦に包まれる。ここ『焼肉リョウ』も総立ちとなる。

  「やったぁぁ」
  「じょぉ〜しょうじぃ、じょぉ〜しょうじぃ」

追いついてからは完全に日本のペース。何度も決定機を迎えるが2−2の
ままゴールデン(Vゴール)方式の延長戦へともつれ込んだ。
延長戦開始前、日本選手団が円陣を組む。控え選手、監督、コーチ、その
他スタッフ全員での大きな円陣・・・俺はまるで映画の一場面を観ている
かのような錯覚に陥った。

予選途中、チーム内部に不協和音が囁かれ加茂さんも更迭された。それで
もここまでたどり着いた。 そして今、初めてチームが一丸となり勝利を
目指している。それがこの円陣に現れている・・・負けるはずがない。

  「そうだぁ。よし行けるぞ。頑張れぇ」

延長戦から北沢に替わり岡野が出場。
今予選、代表に呼ばれていながら一度も出場機会の無かった岡野。途中で
召集された呂比須、中山、高木らにことごとく先を越されてきた。
さぞや悔しかっただろう。その悔しさを今、爆発させろ。

  「オカノッ、オカノッ、オカノッ」

延長戦、イランDFは足が止まり棒立ち。スペースが出来る。
こうなると岡野が生きる。縦横無尽に走って掻き回す。

  「行け、行けぇ〜」

何度か決定機を作るが岡野はことごとく外しまくる。
挙げ句の果てにGKと1対1になりながら、こともあろうに中田にパスを
出してクリアされてしまう。

  「もう〜頼むよぉ」
   



岡田監督も頭を抱える(笑)
延長後半13分。PK戦が頭をよぎり始めた頃、ついに岡野がやった。
中田のシュートでGKが弾いたボールを無人のゴールへと蹴り込んだのだ。
ゴールデンゴール!!

  「やったぁぁぁぁ」

岡野が一目散にベンチへと駆け寄る。
凄い形相の岡野。完全に行っちゃっている、早い、早い(笑)
岡田監督も岡野を目がけてピッチへ飛び出す。こちらも早い(笑)

  「バンザ〜イ、バンザ〜イ、バンザ〜イ!」

『焼肉リョウ』も歓喜の渦に包まれる。いやここだけじゃない。日本国中で
気勢が上がっている。ジョホールバルのスタジアムも揺れている。

酔っぱらいオージが抱きついてくる。
チャカポコからTEL。TELの向こうで号泣している。
俺は不思議と涙が出ない。何故だろう? みんなで観ているからだろうか?
頭が真っ白になったという感覚とも違う・・・
どちらかというと『やっと終わった』『ホッとした』という感覚なのか?
理屈はどうでもいい、やっと念願が叶ったのだ。

■■ イラン戦打ち上げ ■■

『スナックP』で2次会。のっけから日本コールで始まった。

  「ニッポン、ニッポン」
  「日本のゴールが見たーい、見たーい」

オージは絶好調(笑)。既に『焼肉リョウ』で出来上がっているのにイッキ
飲みを始めた。

  「オージのイッキが見たーい、見たーい」

たちまちオージがダウン。(水割りだと思っていたのだが、後で聞いたらテキ
ーラのイッキだったらしい・・・ご愁傷さま(笑))
TV観戦中にコールが少なかった(たぶん『焼肉リョウ』ではコールがなかっ
たであろう)選手達を讃える。

  「アキタッ、アキタッ」
  「ソーマッ、ソーマッ」
  「ナラハシッ、ナラハシッ」
  「ヤマグチッ、ヤマグチッ」
  「キタザワッ、キタザワッ」
  「ナナミッ、ナナミッ」

『焼肉リョウ』のマスター、殿さんが遅れて『スナックP』へ来店。
マッちゃんは仕事があるため途中で切り上げる。

  「マスターッ、マスターッ」
  「トーノッ、トーノッ」
  「マッちゃん、マッちゃん」

こうなったらもう何でも有りだ(笑)
解散となる3時迄、コールは響き渡ったのだった・・・


■■ 視聴率 ■■

日本vsイランを中継したフジTVの視聴率は47.9%。4年前の日本vs
イラク戦(於ドーハ)にわずか0.2%及ばなかった。
しかしBS1での視聴率を加算すると4年前を凌ぐらしい。
W杯決定後の一週間、スポーツ紙の一面は殆どサッカー。特別番組も組まれ岡
ちゃんこと岡田監督及び代表選手は今や時の人となっている。

W杯出場がこんなにも世間に影響を与えるのものだろうか?
試合終了が0時半を回っていたにもかかわらず、俺の婆さんも眠い目をこすり
ながら見ていたそうだ。
視聴率47.9%とはそういうことなのだ。老若男女、サッカーが好きか嫌い
かを問わず、あの試合は日本国中の注目を集めたのだ。

そういえば婆さんも俺の影響を受けた一人。まさか80才の婆さんにオフサイ
ドの説明をするとは思ってなかった(笑)

今日(11/21)現場仕事をしているとサッカーの練習を終えたらしき小学
生2人が歌っていた。

  「オーオーオー、ニィーッポン、ニィーッポン、ニィーッポン」

これからの日本サッカーを背負っていくのは君たちかも知れない・・頑張れ!


■■ 戦いを終えて ■■

『W杯出場』、やっと念願が叶った。
『ジョホールバルの奇跡』により、ついに『ドーハの悲劇』の呪縛がとかれる
ことになった。それにしても、ここまでの道のりは本当に遠かった。

12年前に国立で韓国に辛酸をなめさせられたことから始まり、何度裏切られ
てきたことか、何度挫折しかけたことか・・・
その度に『いつかはきっと日本も』『日本は本当は強いんだ』と自分に言い聞
かせてやってきた。日本サッカーを愛し、信じ続けてきた。

  『やっと報われた、全てはこの日のために・・・』

2ヶ月半に渡る長い戦いを終えた今、充実感、満足感、虚脱感・・・様々な想
いが駆けめぐり心ここにあらず。
精神的、肉体的そして金銭的(笑)にも非常に疲れた2ヶ月半だった。
プール通いを暫く中断しているにも係わらず体重が落ちた。

しかしこれで目標達成ではない。ひとつの通過点にすぎない。
いいや、本当はまだスタートラインに立ったばかりなのかも知れない。
イラン戦で『W杯出場』を決めた瞬間に不思議と涙が出なかった。
もしかしたらその瞬間に、新たなる目標に向かって走り始めたのかも知れない。
そのため感慨に浸りきれなかったのかも知れない・・・

最終目標

  『ワールドカップ制覇』

へ向けて新たなる戦いが始まったのだ。
   
イカレ隊 ’97.11.8 国立競技場にて


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