奈良に出る道のほど 春なれや名もなき山の薄霞
二月堂に籠りて 水とりや氷の僧の沓の音
京にのぼりて 三井秋風が鳴瀧の山家をとふ 梅林 梅白し昨日ふやを盗まれし 樫の木の花にかまはぬ姿かな
伏見西岸寺任口上人に逢て 我がきぬにふしみの桃の雫せよ
大津に出る道 山路をこえて 山路来て何やらゆかしすみれ草
湖水の眺望 辛崎のまつは花より朧にて
水口にて二十年を経て 故人に逢ふ 命二つの中に生たる櫻哉