中国の鉄道利用法は、様々なところで(本サイトLINKページの中国旅行情報庫やA China Travel Link Pageが参考になります)書かれています。逆にいうと、それだけ利用しづらい側面も持っているということかもしれません。それでも切符の入手状況などはかなり改善されてきています。ここでは、そんな中国鉄道の今を私なりにおさらいしてみます。
中国の鉄道は基本的に国営です。ただし一部ローカル線は、地方自治体(省など)に経営主体を移した「地方鉄路」となっています。私の紀行では、来賓〜合山、南寧〜防城港、北海の各路線が、広西地方鉄路です。また、分割民営化(?)計画も進められているようで、各地区の鉄路局のうち広州鉄路局管内では、すでに公司(会社)を名乗っています。
列車の種類は、様々な列車種別が登場し混乱していたのですが、2000年10月の改正ですっきりしました。速い方から特快、快速、普快、普客の4種類となりました。これらの見分け方は列車番号の頭にTがつくものが特快、Kが快速、何もつかないものが普快、普客となっています。また混雑期には臨時列車が多数走りますが、これらの頭にはL、Yなどが付くようです。列車番号の若い物は優等列車、列車番号が大きくなり4桁になると普快、普客、その中でも大きな番号ほどローカルになる傾向があります。
座席の種類は、軟臥、硬臥、軟座、硬座。字を見てのとおり、軟臥が最高級のA寝台、硬座は普通座席です。長距離列車にはほぼ間違いなく食堂車があり、食堂車がほぼ全滅した日本からやってきた私を喜ばせます。最近は、食事時間帯には車内放送で食堂車開店のおしらせをやるようで、メニューの紹介もしてくれます(ただし中国語のみですが)。食堂車は確かに値段が高いですが、ここでおかずを2品ほど頼みビールを飲むというのが、わたしの至福の時間です。なにしろつまみは本格石炭こんろを使った中華料理ですから。
さて、問題の切符入手ですが、北京ならば駅の外国人窓口へ行けばよいのでさほど問題はありません。用紙に記入して窓口に出すだけです。窓口は当然のように中国語をしゃべりますが、筆談OKの日本人ならばさして問題にはならないでしょう。
さて、他の都市を出発する場合どうするか。外国人料金のあった時代と違い、外国人窓口が極めて減少しているのは事実です。以前ほど混んでいない時間帯もありますので、そういうときは素直に並んで買うという手が当然です。ただし、横入りは日常茶飯ですから、前の人に密着するように並ぶのが習慣です。明らかな横入りには当然抗議する権利があります。大声で「パイトゥイバ!(排隊)」と言って見ましょう。最近は横入りを認めない中国人のお客さんもいますし、窓口から見ていて、そういう客には切符を売らないえらい国鉄職員もいます。もちろん旅行会社を使うという手もありますが、50元程度の手数料は仕方ありません。窓口が混んでいるがどうしても乗りたい、そういう場合は切符売り場を見渡してみてください。端のほうに列の短い窓口がある場合があります。窓口の上には、「港澳同胞、台湾、華僑、学生、軍人、軟臥」といった文字が書かれていませんか?居留証(中国の外国人登録証)やパスポートを持ってここに並んでみましょう。中国人は一見無愛想でも親切ですから、ここで売ってもらえる可能性は大きいです。もちろんこれを当然のこととして受け取ってはいけませんが、「旅は道連れ世は情け」、必要ならば情けにすがってみることも大事です。
また、地方の小さな駅から乗る場合、座席指定券そのものを扱っていないケースがあります。ようやくコンピュータ化されてきたとはいえ、ここ中国では座席は駅に割り当てられるもので全国オンラインというわけには行かないのです。ということは小さな駅(例:来賓駅)から乗る客は全員苦行の無座(指定座席なし)硬座か?と早まってはいけません。こういう駅の場合、逆に無座の切符は買いやすいのが普通です。なぜなら窓口でごねる客は存在しないからです。まずは素直に無座の切符を買いましょう。そしてホームに列車が入ってきたら、入り口に立つ列車員にすかさず相談です。停車時間が長いようならば、最初から寝台(硬臥、軟臥)の前で待つのも手です。このときも、外国人である証明を持っていると、ひょっとすると強いかもしれません。混んでいる時期(春節、5月、10月の連休など)、列車(北京関係は得てして混雑)にあたらなければ、実はその列車にはまだ寝台席が残っていたりするものです。その列車員が手続きを取ってくれることもあれば、○号車の列車長のところへ行けといわれることもありますが、ともかく切符の昇級措置を取ってもらえます。空いている列車だと、車内放送で昇級措置の案内をすることもありますが、まずは列車員に相談が一番です。何度も言うように、一見無愛想で怖いこともありますが、彼らは親切なことが多いです。言葉に不自由している外国人を放っておいたりはしません。ただし本当に満席のこともありますので、そういうときはあきらめてください(笑)。中国語で「めいばんふぁ(どうしようもない)」な時には、やはりどうしようもないです。
脅かしのようなことも少し書きましたが、原則的には切符は非常に買いやすくなっています。時期を間違えなければ、そんなに痛い思いをしなくても、雄大な汽車旅を味わえるはずです。もっとも間違って何かの祝日、行事中に中国に来られて、全く切符が取れなかったとしても私は一切の責任を負いかねますので、「旅行のリスクは私のリスク。私は私設旅行団の団長。」という考え方のできる方にしかおすすめはいたしません。
さて、「大陸の列車の旅をしてみたいけれども休暇は限られているし辛い目にも会いたくない」というのが、一般社会人の当然の願いでしょう。そういう場合、列車を選ぶのもひとつの方法です。長距離になればなるほど、北京などの主要都市が絡んでくれば来るほど、そして原則優等列車ほど切符は買いにくくなります。逆にいえば地方都市から地方都市への中距離列車の切符は買いやすいということです。昆明で言えば、北京、上海行きなどの切符を手に入れるのは骨かもしれませんが、隣の省の省都、南寧や貴陽への切符は当日の発車1時間前でも取れたりします。このような列車はTやKがついている訳ではなかったりもしますが、きちんと空調新型車で運行されているものもあります。中国全図で見るとその移動距離はわずかなもの、でも実際の距離は東京〜北海道くらいの距離があったりします。有名どころを選ばないというのはひとつのキーワードです。
私の旅行記の中にも、聞いたことも無いような所へ行く列車が出ています。短距離の普客などは、乗客の流動も激しく、たとえ無座硬座でもどこかで座れるものです。荷物は全てホテルに置いて、持つものは貴重品袋とポケットの少々のお金。で、近郊普客列車のローカル汽車旅。素晴らしいです。私は週末になると、時々そうします。
中国の鉄道も将来的には合理化や近代化に進むでしょう。でも日本人の我々が感じる不合理の中に、意外な合理性があって、そのおかげでうまく旅ができることもあります。
中国鉄道の旅、いかがでしょうか。
(2001年9月18日 昆明にて ぱんだ)