業務日誌(2003年9月その3)

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9月28日 週末にかけて

 週末にかけて、会務ばっかりやっていた週でした。

 9月26日(金):夜から広告調査委員会の特別委員会会期日。しばらくさぼっていたので休むわけに行かず出ました。出ると仕事を回される恐怖と隣り合わせですが(笑)、幸いにして切り抜けました。
 委員会の議題は、弁護士の専門認定制度の諮問に対する委員会意見の策定が主でした。私もよく「専門は何ですか?」と聞かれるんですよね。このページに書いたとおりですが。
 そんなわけで、弁護士の専門認定制度について、一般的なニーズがあるのは事実なのですが、実際に、一般市民の方が最も多く相談されるような「相続」「離婚」「借地借家」等の事件は、実はどの弁護士も「扱えて当然、もし不得意なら恥」という分野です。従って、専門認定制度ができたとしても、このように最もポピュラーな分野などは対象外となる可能性が大きいのではないでしょうか。作ってみたら一般の方には縁のない専門認定制度でしかなかった………という結末だけは避けたいものです。

 9月27日(土):今年もよろず相談会が行われました。2年前は裏方でしたが、さすがに裏方は飽きたので今年は相談員の方で参加してきました。なぜか今年は例年になく相談会が盛況で、弁護士会が相談会でごった返しているのを初めて見ました。偶然新聞の扱いが大きかったからのようです。

 9月28日(日):東弁広報委法教育部会の出前模擬裁判指導で私立八王子高校へ行ってきました。八王子高校は、リーガルマインド研究会というすごい名前の同好会があるそうで、大学生のゼミかと思うくらいやる気のある部員の方が揃っています。今回は同好会の文化祭での出し物として模擬裁判をやるのをお手伝いする形になりました。
 ………それはいいのですが、ご存じJR中央線の大運休にひっかかってしまい、大変な思いをしました(^^;新宿から中央線で西八王子まで一本、のはずが、仕方なく京王線で京王八王子→タクシーという羽目に。




9月25日 被疑者公選弁護制度

 最近の日弁連は割とマスコミ対策がうまかったのですが、本日の朝日新聞朝刊には揶揄されちゃってましたね。

 刑事事件の容疑者の段階から公費で弁護士をつける「公的弁護制度」について、日本弁護士連合会は、当初は重大事件と少年事件の一部に対象を限定し、その後、段階的に拡大するよう政府に求めていく方針を固めた。これまでは逮捕・勾留された全容疑者を対象にすべきだとの立場だったが、各地で弁護士が足りず、方針転換した。

 被疑者公選弁護制度を導入するには、人手が足りないというのは地方会からこれまでも声は上がっていたものです。ここまで「全件適用」という理想論で突っ走ってきて、いよいよというときに腰が引けてしまうのでは、日弁連執行部はどういう見通しを持っていたのかねと言われてしまいます。

 問題はマスコミに無理解なまま報道されることです。本日の朝日新聞では、「余る公認会計士」「足りぬ弁護士」と、公認会計士の就職難とセットで論じられていましたが、実際には全然レベルの違う問題です。

 公認会計士だって、役割論から言えばまだまだ足りないと言われており、金融庁は合格者をどんどん増やす意向だそうですが、実際合格しても就職できない、食えないという事態が生じかねないという記事です。弁護士も状況は似たような者で、司法試験合格者を闇雲に増やしても、合格したばかりの新人が就職できるか、食えるかについては不安は高まるばかりです。

 で、公選弁護の問題ですが、はっきり言って、現状の国選弁護の報酬水準では弁護士は採算が合いません(このころの日誌に述べたとおり)。実際には東京でも全件公選弁護となったら弁護士が足りないのではないかと危惧されていますが、これは現状の起訴後の国選弁護でもなり手が常に不足がちだからです。なり手が不足なのは、ボランティア的な報酬で運営しているからです。この問題を解決しない限り、弁護士の数だけを増やしても、公選弁護の担い手が増えることに直結しないことになります。

 だから、「足りぬ弁護士」というのは、「足りぬ公選弁護の担い手」ではありますが、弁護士の数というよりもインフラが整っていないことにも原因があるのです。日弁連は、この点を本当に何とかしないといけないでしょう。




9月23日 小規模個人再生手続き

 法律施行直後には、サラリーマンには使い道がないんじゃないかと申し述べた個人再生手続きですが、約2年が経過して振り返ってみると、それなりに使ってます。

 といっても、給与所得者再生は使いにくい面が多いため、私の場合はもっぱら小規模個人再生手続きの方です。この手続き、債権者の抵抗が多いのかなと思っていたのですが、意外と反対は少なく、あっさり再生計画案が通ってしまうことがおおいため、最近では任意整理では3年で返せない方で破産には抵抗感がある方については、多くの場合個人再生を勧めています。





9月21日 裁判員制度と刑事司法の改革

 2日前ですが、金曜日に日弁連作成のビデオドラマ「裁判員〜決めるのはあなた」を見ることができました。

 今まで日弁連や東弁が何度か上映会をやってはいたのですが、あいにく予定が合わず、今回法友全期会の企画でようやく視聴にこぎつけました。

 弁護士会の作成するビデオというと、今までは説教臭くて身内であってもとても見ていられる代物ではなかったのですが、今回は評判が上々だとか。確かに見ていて、全く説教臭さがないとまでは言えませんが、それなりにシナリオも練られていて面白く見ることができました。

 裁判員制度は、現状の議論では、裁判官二人に裁判員5,6人とかそれくらいの規模という方向で議論されているようですが、とにもかくにもこれが導入されれば現状の刑事裁判制度は大きく変わらざるを得ないはずです。

 裁判員の方々を何年も拘束するわけにはいきませんから、審理は数日で終わるようにしなければならない。そこで刑事の準備手続きを創設して争点の整理をすることが予定されているようです。

 しかし、そもそも裁判員の方々に膨大な調書を読めと要求することは不可能ですから、証拠は法廷での証言のほかは、証拠物、実況見分等の目に見える証拠に限定しなければならなくなるでしょう。供述証拠による証明に頼り切っている検察官には大変な時代になると思われます。

 それに、争点整理のためには、検察、弁護双方の事前の証拠開示が必要不可欠です。………と思っていたら、本日の朝日新聞でその辺の特集が組まれていましたね。