業務日誌(2003年10月その1)

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10月10日 プチ日誌

 中坊公平氏の弁護士廃業宣言でマスコミが結構騒いでいますね。
 住専の最盛期から、ちょっと持ち上げすぎ?という感があったのですが、持ち上げて落とすのがマスコミの常だからなあ。
 人間誰でも光と影があります。住専の社会的功績は否定しませんが、街金もかくやという強硬すぎる姿勢に泣いていた債務者が多かったのも事実です。直接は知りませんが、ワンマンで有名な中坊社長の意を酌みすぎて、住専の部下たる弁護士が一線を越えてしまうということも、またさもありなんです。
 それにしても、強烈な個性の前には、コンプライアンスなどという言葉はふっとんでしまうのでしょうね。




10月9日 何でも「併合罪加重」の弊害

 やっぱり出てきました。とりあえず併合罪加重を狙って些末な罪を全部立件する方針。

 この話の発端は、新潟の例の少女監禁事件です。

 検察が監禁致傷罪に軽微な窃盗罪を合わせて起訴して併合罪加重を狙った裁判で、1審は懲役14年。

 これがおかしいのではないかという批判を私はしました(この日誌この日誌。併合罪の詳しい解説はそちらを参照して下さい)。控訴審は、私の批判と同じように考え、懲役11年に減刑をしました。

 ところが最高裁は、控訴審の判決を破棄してまたしても懲役14年の判決を下し、これが確定しました。

 この最高裁判決、私は大いに問題だと思ってます。一審判決と結論は同じでも、中身はさらに数段ひどいものです。何よりも、このように、罪を重くするために「併合罪加重」をしていいのか?という批判に対し、一審判決は、悩んだ上で、「この事件の特殊性からはやむを得ない」という形で結論を導いたのに対し、最高裁の理由は、「法文上限定はない。だからそんなことは悩まなくていい」というものだったからです。

 最高裁は、なぜか刑法の解釈については、時々このような「迷」判決を出します。刑法の理論というのは、学説の対立が激しく、一つの理論に乗ることは危険だという判断もあるのでしょうか。個々の条文の背後にある趣旨を何ら顧みず、「条文でこうだからこうだ」という浅薄な理由付けで結論を導いてしまうことがあるのです。それが、どんな波及効果を持つかも考えずに。

 で、またしても新潟ですが、先月の未成年者連れ去り事件。未成年者略取と逮捕監禁致傷ではあきたらず、地検は詐欺と銃刀法違反まで起訴するそうです。

 詐欺って何でしょう?被害者を車のトランクに押し込めたままフェリーに乗った際、被害者の分の運賃2060円を支払わなかったことだそうで。そりゃ払うわけないよな、と突っ込みたくなるような些末な件です。

 仮に告訴されてもたぶんこれだけなら立件もされないような事実でまたしても懲役15年求刑を狙うのでしょうか。こうした「合わせ技一本」がどんどん認められていくと、日本の刑法自体が変質してしまいます。

 そのうち、万引き1件で、窃盗+住居侵入(万引き目的の立ち入りだから)という罪名が当たり前になってしまうかも。




10月5日 「ようこそ先輩」

 というタイトルの母校のイベントに出て、講演をしてきました(昨日のことです)。

 母校の開成高校のPTAが主催する講演会で、対象は高1の生徒、講師は若手・中堅あたりのOBから4人を選んでいるそうです。私以外は民間企業勤務の方、国家公務員の方、医者の方が講師でした。

 まあ平たく言えば、高校生の進路選択の参考になる話をしてくれ、という趣旨のようです。

 私自身は、一応「正義とは何か」というテーマで、アメリカの法教育の教材を肴に、弁護士の目から見た多面的な「正義」というものを話したつもりですが、まあそれなりに面白く受け取ってはもらえたようです。

 まあ母校に呼ばれるととりあえず思い出話をしたくなってしまうのが人情のようで、各講師ともひとくさり学生時代の思い出を語ってからでないと本題に入らない、というのは共通していました。その母校での体験で、けっこう共通しているのが、「先輩との上下関係が厳しく、結構理不尽な目にあった体験が、実社会での下積み時代に生きている」というもの。

 実際、私の目から見ると、開成の上下関係というのは、「厳格」ではありましたが、それほど理不尽なものだという感じはしなかった(暴力のようなものは少なくともなかったし、単なるいじめもなかった)のですが。どちらかというと、私自身が「理不尽な扱い」に対しては、すぐに反発して異議申し立てをするタイプであったのですが、最後まで理不尽な扱いを押し通された、という経験はあまりないです。

 最近は、その母校の上下関係もずいぶん変わっているようです。在学時代、冗談交じりに「一年違えば家来同然、二年違えば奴隷同然、三年違えば石同然」などと言っていた言葉を現在口にしようものなら、時代錯誤的発言として総スカンを食らってしまうのでしょう(この言葉、かつてだって本気で実行されていたとは到底思えないですが)

 開成特有の先輩と後輩の目に見えない関係、というものがなくなっていくとすれば、一つの伝統文化がなくなるようでちょっと寂しいですが。




10月3日 プチ日誌

 10/1の日誌にも触れましたが、2年あまり使ったタイトルロゴを変更してみました。
 前のロゴは、このHPを立ち上げるときに最初のレイアウト作りを手伝ってもらった後輩が作ってくれたもので、それなりに愛着もあったのですが、まあちょっと飽きたというのが正直なところ。
 新しいロゴはどうでしょうか?




10月2日 アエルの倒産

 消費者金融の中堅アエル(旧日立信販)が会社更生の申立をしたそうです。

 関係ない人には関係ない話ですが、もしアエルに長期間借り入れがある人、あるいは最近まであった人は要注意。

 なぜかというと、会社更生法手続き上届けられなかった債権は消滅し、届け出られたものも減額されるおそれがあるからです。

 「債務者はこちらなのに何の関係が?」と思われる向きもあるでしょうが、過払い請求権というものがありえます。

 例えば10年程度の長期間取引が続いている場合、利息制限法引き直し計算を行った場合には、債務があるどころか、マイナスになっている(=逆に過払い請求権がある)場合が多々あります。また、利息制限法を超える約定利息で完済した場合も当然過払いになっています。

 通常、債務整理の相談に来られた場合、弁護士は債権者に対し、取引履歴の開示を求め、引き直し計算に基づいて弁済計画の提案(あるいは過払いの請求)を行うわけですが、債権者(過払いの債務者)が会社更生手続きを経てしまうとどうなるか。知らない間に過払い債権が消滅してしまうことになりかねません。

 そんなわけで、アエルを含めて債務整理をお考えの方は、急いだ方がよろしいかと。




10月1日 プチ日誌

 うわわ、仕事に私用で連日気がついたら12時過ぎ………。
 昨日はタイトルロゴ変更だけで終わっちゃったし(^^;
 長崎少年事件審判とか、広告調査委員会の件とか、アエルの倒産とか書きたいことはあるのですが、また明日と言うことで。