業務日誌(2004年2月その2)

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2月20日 商工ファンド最高裁判決

 本日、旧商工ファンド(現SFCG)に対する過払い金請求がなされた事件での最高裁判決が2件ありました。これこれですね。

 私は別にこの事件の弁護団には加わっていませんが、それでも商工ファンド相手の事件を受任することはままありますし、サラ金業者相手の債務整理にも非常に影響の大きい事案でしたので、結構な関心を持っていましたが、結論としては原告側の全面勝訴、商工ファンドの逆転敗訴となったようです。

 法律的な側面を簡単に言うと、原告は利息制限法による引き直し計算の結果、原告には商工ファンドに対し過払いが生じていると主張しており、これに対し商工ファンド側が、貸金業法43条1項の「みなし弁済」が成立しているから、利息制限法以上の約定利率の受領は有効で、過払いは生じていないと争っていたものです。

【利息制限法1条1項】金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。
   元本が十万円未満の場合          年二割
   元本が十万円以上百万円未満の場合  年一割八分
   元本が百万円以上の場合          年一割五分


【貸金業の規制等に関する法律43条1項】貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息(利息制限法 (昭和二十九年法律第百号)第三条 の規定により利息とみなされるものを含む。)の契約に基づき、債務者が利息として任意に支払つた金銭の額が、同法第一条第一項 に定める利息の制限額を超える場合において、その支払が次の各号に該当するときは、当該超過部分の支払は、同項 の規定にかかわらず、有効な利息の債務の弁済とみなす。
 第十七条第一項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第一項に規定する書面を交付している場合又は同条第二項から第四項まで(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第二項から第四項までに規定するすべての書面を交付している場合におけるその交付をしている者に対する貸付けの契約に基づく支払
 第十八条第一項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十八条第一項に規定する書面を交付した場合における同項の弁済に係る支払

 この他、利息の天引きについても有効性が争われましたが、最高裁はこの点も含めて貸金業者に厳しい解釈を示し、
@ 利息の天引きがされた場合には、貸金業法43条1項の適用はない
A 43条1項の適用があるためには、同法17条書面(貸し付け時に交付すべき書面)
は法律上要求されている全ての内容が記載されていることが必要で、一部でも欠けていれば43条1項の適用はない
B 同法18条書面(支払い時に交付すべき書面)は、支払いの直後に交付すべきで、支払い前に振り込み用紙とともに交付しても有効ではなく、また遅れた場合にも43条1項の適用はない
 と判示しました。

 ま、最高裁で弁論が開かれていたことから、高裁判決がひっくり返って原告側が勝訴するであろうことはだいたい予想はついていましたが、それにしても伝え聞いて驚いたのが、商工ファンド側の最高裁時点の代理人に、商工ローン問題が社会問題化した当時の金融庁長官(現在は弁護士)が就いたことです。このような代理人を一本釣りする商工ファンドの戦術のエグさにも呆れますが、受ける方も受ける方です。自分が監督権を行使していた当の対象の代理人についてしまうというのは、直ちに弁護士倫理には反しないとはいうものの、モラルとしてどうなんでしょうね。ま、国税高官が退官後に税理士として「節税指導」をすることが当たり前であることを考えるとダメとはいえんでしょうがね。




2月16日 今年も事前研修

 今年も司法試験合格者に対する研修所入所前の任意研修(事前研修)の一つ、裁判傍聴会が行われ、またまた引率と座談会を担当しました。これがどんなものなのかは昨年の日誌参照。

 昨年の日誌では、検察官の出席が不十分という愚痴を書きましたが、今年はついに検察官の出席はゼロ。いよいよ事前研修などというものには見向きもしなくなったようです。法科大学院が始まれば、事前研修などは無意味になると踏んでいるのでしょう。

 それだけならいいのですが、今年は毎年年末に行われている合同研修(合同講義)で必ず付随していた「若手弁護士との座談会」がなかったそうで、本日突然法曹養成センター委員の方から「本日の座談会は1時半までやってくれ」と言われました。

 冗談じゃないよぉ(^^;1時半には東京地裁で弁論期日が入っています。結局、仕方なく途中で一度解散にして、裁判に出頭してからまた弁護士会に戻り、その後に座談会第2部をやってしまったため、終わったのは2時過ぎでした。

 当然あるべき「若手弁護士との座談会」が抜けてしまったり、と、今年の段取りが悪いのは、今年の幹事会の第二東京弁護士会がさぼっているかららしい(東京三会の合同行事なので、東弁、一弁、二弁がまわりもちで幹事をやります)。二弁は新しもの好きだけど、続けるということについてはいつもながら責任感がないなあ………とぼやきながら弁護士会館を後にしたのでした(東京の三つの弁護士会についてはこちら参照)。




2月14日 プチ日誌


諏訪湖

 バレンタインデーの土曜というのに、出張で長野は諏訪湖方面に行ってきました。観光で行くなら楽しいですが、仕事ですので、凍結した諏訪湖を楽しむわけにも行かず、フラストレーションが溜まるばかり(^^;













2月12日 HDDレコーダー

 自宅に待望のDVD・ハードディスクレコーダーが届きました。昨年からずっと狙っていたNECのAX300という機種です。

 現在、売れ筋のHDDレコーダーというと、SONYのスゴ録、PanasonicのDIGA、パイオニア、東芝といったところでしょうか。それに反して、わりとマイナーなAX300に走ったのは、パソコンとの連係機能が圧倒的に違いそうだったからです。

 ただし、まだパソコンに関連ソフトをインストールするところまでいっておらず、宝の持ち腐れですが(笑)。とりあえず、試しにイラク戦を録画してみたり、タイムシフト等一通りの操作をしてみて、喜んでいる状態です。

 ちなみに昨年末に買ったこれは、T23で使おうとするも、なぜか熱暴走してしまいほとんど使い物にならない状態のまま今日に至ってしまいました(^^;残念ながら、T20系は、冷却機構に難があるのか、重い作業を連続してさせると暴走してしまう傾向があるようです。




2月11日 刑法改正?

 本日の報道で、法相が法制審議会に法定刑引き上げを柱とする刑法改正を諮問したとか。

 個人的には、法定刑の上限の引き上げはまあ、やむを得ないかなという気がします。罪名によっては、法定刑が低いために、社会の処罰感情との乖離が大きすぎる場面が生じていたこともあるでしょう。例の新潟の少女監禁致傷事件で、裁判所が奇妙奇天烈な併合罪加重をしてまで懲役14年をひねり出さなければならない事態が、立法によって解決されるのであれば、少なくとも正道であることは事実です。

 問題は、法定刑の下限まで引き上げる必要があるかです。例えば殺人は下限が3年から5年への引き上げがもくろまれているようですが、これは疑問です。殺人といっても、情状により、刑務所に行かせるのも忍びないような事案も含まれています。しかし、3年を超える懲役刑には執行猶予が付せませんので、法定刑下限を5年に引き上げてしまうと、原則として執行猶予付きの刑が言い渡せないことになってしまいます。

 凶悪犯罪への対処が必要だ、という理由であれば、上限を改正すればすむ話であり、下限まで引き上げようというのはなんだか他の思惑が入り込んでいるような気がしてなりません。