和歌と俳句

後撰和歌集

前のページ< >次のページ

よみ人しらず
あまの戸をあけぬあけぬといひなしてそらなきしつる鳥のこゑかな

よみ人しらず
夜もすがら濡れてわびつる唐ごろも逢坂山に道まどひして

よみ人しらず
おもへどもあやなしとのみいはるれば夜の錦の心地こそすれ

よみ人しらず
おとにのみ聞き来し三輪の山よりも杉の數をば我ぞ見えにし

兼輔朝臣
難波潟かりつむ葦の葦筒のひとへも君を我や隔つる

よみ人しらず
わがことや君もこふらん白露のおきてもねても袖ぞかわかぬ

よみ人しらず
つらくともあらんとぞ思ふよそにても人やけぬるときかまほしさに

在原業平朝臣
暮れぬとてねて行くべくもあらなくにたどるたどるもかへるまされり

元良親王
わりなしといふこそかつは嬉しけれ愚かならずと見えぬとおもへば

藤原興風
わが恋を知らむと思はば田子の浦に立つらむ浪の數をかぞへよ

貫之
色ならば移るばかりも染めてまし思ふ心をえやは見せける

大江朝綱朝臣
葦引の山ひはすともふみかよふあとをも見ぬはくるしきものを

貞元のみこ
おほかたはなぞや我が名の惜ししからむ昔のつまと人にかたらむ

返し おほつふね
人はいさ我はなき名の惜しければ昔も今もしらすとをいはむ

よみ人しらず
跡みれば心なくさの濱ちどり今は声こそきかまほしけれ

よみ人しらす
河と見て渡らぬなかに流るるはいはで物思ふ涙なりけり

橘公頼朝臣
あま雲に鳴きゆく雁の音にのみ聞き渡りつつ逢ふよしもなし

貫之
住の江の浪にはあらねど夜とともに心を君に寄せわたるかな

よみ人しらず
見ぬほどに年のかはればあふことのいやはるはるにおもほゆるかな