源宗于朝臣
東路のさやの中山なかなかにあひ見てのちぞわびしかりける
貫之
あかつきと何かいひけむ別るればよひもいとこそわびしかりけれ
駿河
まどろまぬ壁にも人を見つるかなまさしからなむ春の夜の夢
元良親王
くやくやと待つ夕暮れと今はとて帰るあしたといづれまされり
返し 藤原かつみ
夕暮れは松にもかかる白露のおくるあしたやきえははつらむ
よみ人しらず
うちかへし君ぞこひしき大和なるふるのわさだの思ひいでつつ
返し よみ人しらず
秋の田のいねてふことをかけしかば思ひいづるかうれしげもなし
よみ人しらず
人こふる心ばかりはそれながらわれはわれにもあらぬなりけり
伊勢
おもひかはたえずながるる水の沫のうたかた人にあはできえめや
三統公忠
思ひやる心はつねにかよへどもあふさかの関越えずもあるかな
よみ人しらず
消えはててやみぬばかりか年を経て君を思ひのしるしなければ
返し よみ人しらず
思ひだにしるしなしてふ我が身にぞあはぬなげきのかずはもえける
よみ人しらず
ほしがてにぬれぬべきかな唐衣かわく袂のよよになければ
よみ人しらず
よとともにあふくま河のとほければそこなるかげを見ぬぞわびしき
よみ人しらず
わがごとくあひおもふ人のなきときは深き心もかひなかりけり
よみ人しらず
いつしかとわかまつやまに今はとてこゆなる波に濡るる袖かな
よみ人しらず
ひとことはまことなりけりしたひものとけぬししるき心と思へば
よみ人しらず
むすびおきしわがしたひもの今までにとけぬは人のこひぬなりけり
よみ人しらず
ほかのせは深くなるらし明日香川昨日の淵ぞ我が身なりける
返し よみ人しらず
ふちせともいさやしらなみ立ち騒ぐ我が身ひとつはよるかたもなし