古今集・東歌 陸奥歌
あぶくまに霧たちくもり明けぬとも君をばやらじ待てばすべなし
金葉集・雑 藤原隆資
待つ我はあはれ八十路になりぬるをあぶくま川の遠ざかりぬる
詞花集・賀 入道前太政大臣道長
君が世にあふくま川のそこきよみ千歳をへつつすまむとぞおもふ
俊頼
ゆくすゑにあふくま川のなかりせばけふの別れを生きてせましや
藤原顕仲
名にしおはば あふくま川を 渡りみむ 恋ひしき人の 影やうつると
永縁
濡れ衣と いふにつけてや ながれけむ あふくま川の 名こそ惜しけれ
頼政
流れても 契りし妹を 堰く人や あふくま川に かくるしがらみ
俊恵
恋ひわたる なかにしもなと 名にもおはぬ あふくま川の 流れそめけむ
俊恵
水茎の あとかき流し けふぞやる あふくま川と いはひそめつつ
定家
むすびてもなかなかぬるる袂かなあふくま川の深きおもひに
定家
我が君にあふくま川の小夜千鳥かきとどめつるあとぞ嬉しき
定家
立ちくもるあふくま川の霧のまに秋をばやらぬ関も据ゑなむ
実朝
心をし信夫の里にをきたらば阿武隈川はみまくちかけむ
牧水
つばくらめ ちちと飛び交ひ 阿武隈の 岸の桃の花 いま盛りなり
牧水
夕日さし 阿武隈河の かはなみの さやかに立ちて 花散り流る
赤彦
阿武隈の川の雨雲低く垂り水の音かそかに夕さりにけり
悌二郎
名無し茸阿武隈川に抛つたり
青邨
阿武隈の瀬々にかかれる鮎の簗
茂吉
たひらかに水のおもてのひかりをる阿武隈河を見て過ぎにけり
楸邨
阿武隈が若き薄の上を充たす
爽雨
舳波たつ阿武隈渡舟鮭の秋
楸邨
一つゐて頂上あるく羽抜鳥
楸邨
稚子の墓露いつぱいの夏帽子
青畝
刈田より阿武隈川となりにけり