和歌と俳句

津軽

親隆
蝦夷が住む 津軽の野辺の 萩さかり こや錦木の たてるなるらむ

晶子
陶器の 大き鉢して みちのくの 津軽の海は 夕立を受く

牧水
みちのくの 津軽の林檎、この林檎、手にとりておもふ みちのくの津軽

牧水
橇の鈴 戸の面に聞ゆ 旅なれや 津軽の国の 春のあけぼの

牧水
堅雪の 畦道ゆけば 津軽野の 名残の雁か 遠空に見ゆ

牧水
白雪の 何処にひそみ ほろほろと 鳴き出づる蟇か 津軽野の春

牧水
帰る雁 とほ空ひくく わたる見ゆ 松島村は 家まばらかに

牧水
津軽野や 落葉木立の まばらかに つづける村の 端に住む君

牧水
津軽野を おもへば遠し いつしんに 君をおもへば いよいよ遠し

牧水
みちのくの 津軽のはてと おもふより こころいよいよ こひしくなりぬ

面つゝむ津軽をとめや花林檎 虚子

樺の咲く山なみ低くどこまでも 蛇笏

赤児さめし右車窓より夏暁くる 草田男

津軽の西日ここ先途なき流行歌 草田男

津軽人土切る音す昼の虫 草田男

昼の酔津軽の稲風稲ゆする 草田男

津軽とて梅雨青雲に雪の山 秋櫻子

秋風のどこにも吹けり竜飛崎 立子

津軽よりうす霧曳きて林檎園 蛇笏

菜を見ざり四望刈田の米どころ 秋櫻子

道の辺に一樹百顆の林檎立つ 秋櫻子