和歌と俳句

奥入瀬

滝とどろとどろと桂はや散るか 亜浪

マッチ擦れば焔うるはし閑古鳥 水巴

密林や少し明らみ橡の花 水巴

新緑やたましひぬれて魚あさる 水巴

口々に月夜茸とて恐れけり 汀女

奥入瀬や額の花叢縫ひ下る 立子

道と渓流蝉声も亦蜿蜒と 草田男

岩々すずし水の本道間道奔せ 草田男

屈竟の橡の実つかむや水去来 草田男

底沙すずし潜ぐれど見ゆる鳰一つ 草田男

紅葉踏む峡中第一の滝の前 秋櫻子

紅葉散る水は瀬となり滝と落つ 秋櫻子

岩頭に瑠璃鳥の一羽や滝かかる 秋櫻子

岩燕わが奥入瀬の午前が満つ 楸邨

奥入瀬は細瀧多しちる紅葉 悌二郎