搦手もひらきて菊の鉢並ぶ
燦々と夕日紅葉の山葡萄
蔦沼とかこむ紅葉と他は暮れぬ
紅葉踏む峡中第一の滝の前
炭火佳し豊の稔りのきりたんぽ
うかぶ鴛鴦色うしなへりななかまど
紅葉散る水は瀬となり瀧と落つ
岩頭に瑠璃鳥の一羽や瀧かかる
月さすや枯野にのこる夕茜
落葉松をいでて枯野の夕月夜
浅間立ち月天四方に凍りけり
蝗さへほろびし風の沼田のあと
水錆びてわたる鴫なし芒原
風雲の垂れて枯れざる葛もなし
二上山時雨れて遂に見失ふ
捨案山子雑兵倒れ伏すに似て
山茶花や戦記の末に散りにほふ
羽子板や病む一葉が命の灯
元日や多摩を鎮護の高尾山
膝に落つ撒手拭や初芝居
鰭酒も春待つ月も琥珀色
黄塵に追はれよどむや鶴見川
梅咲けり禽たちかはる碓氷川
老梅を支へし巌や碓氷川
畦焼けば曇る妙義のなほ淡し
こもり鳴く山鳩梅をはなれけり
磯波の泡波伸びつ金盞花