寒鯉の美しくしてひとつ澄めり
寒鯉はしづかなるかな鰭を垂れ
寒鯉を真白しとみれば鰭の藍
除雪車の力尽きてはいこふ駅
除雪車のきらめく燈にもつもる雪
除雪車を降り埋めんと雪舞へり
除雪車にあかつきの天暗かりき
大雪のスキー列車の夜をいねず
雪の山夜空をせばめ立ち並ぶ
湯檜曾橋膝をうづむる雪積めり
谷の温泉の灯はくらけれど雪明り
雪の瀬に獲たる魚ぞと爐に焼けり
古き機ふるき燭置き機始
雪袴つけたるひとの機始
青天の吹雪わたれりスキー行
橿鳥のこぼす粉雪の光り舞ふ
四方の山夕ばえきたり雪凍てぬ
野いばらを引き捨てありぬ芽ぐめるに
雑木山芽立つ景色の田に映り
海あれぬ春日空にくもらねど
雲雀鳴けり荒磯の径をゆきければ
風搏てる麦生に居りて鳴く雲雀
掻きひろげかじめを干せり学び舎に
かじめ踏みけふ卒業の子は行きぬ
よき袴かじめに濡れて子は行きぬ