和歌と俳句

卒業

お前と酒を飲む卒業の子の話 碧梧桐

春雪の解くるが如く卒業す 普羅

押し習ふ卒業式の太鼓判 久女

靴買うて卒業の子の靴磨く 久女

卒業やちび靴はくも今日限り 久女

卒業の子に電報すよきあした 久女

卒業や浮世の濤の音きこゆ 草城

卒業の兄と来てゐる堤かな 不器男

ともかくも卒業したるめでたさよ 風生

うなゐ髪あぐべくのびぬ卒業す 風生

卒業の窓に垂れたり絲桜 青邨

校塔に鳩多き日や卒業す 草田男

卒業のオルガンなれるかの病舎 誓子

卒業の日の病棟に在る患者 誓子

卒業のうすきけはひをけふはしたり 誓子

卒業の看護婦人の子を抱くも 誓子

卒業の眉打ち上げて来りたり 虚子

卒業の子らが机を洗ひ居る 草堂

母の名を保護者に負ひて卒業す しづの女

いまそかる霊の父に卒業す しづの女

かじめ踏みけふ卒業の子は行きぬ 秋櫻子

一を知つて二を知らぬなり卒業す 虚子

ただならぬ世に待たれ居て卒業す しづの女

卒業期征きしは今も還るなく 楸邨

運命は笑ひ待ちをり卒業す 虚子

卒業に下宿の荷物まとめけり 占魚

卒業のめもとすずしく泣く娘かな 麦南

卒業にわれ父の如くにも老いし 青邨

卒業子頤にひげもち恩を謝す 青邨

卒業を祝ふ一人を忘れゐし 汀女

卒業や丘は斜に櫟立ち 汀女

おとなびてつとめを語る卒業せり 林火

はだれ野の安曇に聞けり卒業歌 

彼処焼け此処のこる街卒業す 青畝

卒業や畳しづけく思ほゆる 誓子

雲を洩る日のひとすぢや卒業す 林火

体内に機銃弾あり卒業す 三鬼

卒業す鼻をかむにも紅潮し 三鬼

卒業の美女より水の如き礼 静塔

朝の坂夜の坂今宵卒業す 汀女

卒業や綿着短き親はべり 静塔

卒業や造花のバラに蕋を植ゑ 鷹女

卒業や楊枝で渡すチーズの旗 不死男

卒業や尻こそばゆきバスに乗り 三鬼

潦あれば日があり卒業す 不死男

卒業の大靴ずかと青荒地 三鬼

痩身のデウスにうたひ卒業す 青畝

夜空蒼しひとりごと言ひ卒業す 楸邨

握り太徳利を卒業生に注ぐ 静塔

卒業や流れる花の花言葉 静塔

今日は孫卒業の日よ何かせん 立子

漁舟漕ぐ力瘤けふ卒業す 不死男

卒業のをさなの答辞師に添はれ 爽雨

卒業奏今日は一日長裳裾 誓子

無造作に辞儀而うして卒業奏 誓子

卒業奏あまたの贈花立ちて聴く 誓子

卒業奏弾き終へて身を正しうす 誓子

卒業奏余韻収まるまで起たず 誓子

木綿着し祖母をうしろに卒業す 双魚

卒業のバテレン恋ひの島へ旅 爽雨

卒業の旅のオランダ橋にいま 爽雨

水と火が家々にあり卒業す 双魚