和歌と俳句

春の山

寝ころぶや手まり程でも春の山 一茶

草籠をおいて人なし春の山 子規

春の山越えて日高き疲れかな 子規

江戸人は上野をさして春の山 子規

家ありや牛引き帰る春の山 子規

春の山畠となつてしまひけり 子規

どこやらで我名よぶなり春の山 漱石

模糊として竹動きけり春の山 漱石

春の山筧に添うて登りけり 虚子

石燈や曇る肥前の春の山 漱石

大仏を写真に取るや春の山 碧梧桐

晶子
人にそひて今日京の子の歌をきく祇園清水春の山まろき

晶子
上つ毛や赤城はふるき牧にして牛馬はなつ春かぜの山

晶子
春の山比叡先達は桐紋の講社肩衣したる伯父かな

何となく牧車通へり春の山 碧梧桐

長谷寺の現れ来り春の山 虚子

春山もこめて温泉の国造り 虚子

春山や松に隠れて田一枚 鬼城

春山や岩の上這う山歸來 鬼城

入口に孟宗藪や春の山 石鼎

芝に落つ我が影小さし春の山 石鼎

赤彦
萱の芽の青芽の伸びを踏みのぼる春の圓山はおもしろきかも

夕ばえてかさなりあへり春の山 蛇笏

憲吉
背戸川の音のさむけれ向うにてやうやく色ににほふ春山

春の山くびれをもちてまろさかな 風生

雪残る遠嶺を負ひぬ春の山 風生

上へ上へと重なりまろし春の山 風生

春山や鳶のたかさを見て憩ふ 蛇笏

白秋
春山は杉も青みていつしかと鶯の声が鶸に代りぬ

春の山のうしろから烟が出だした 放哉

鳥啼きて湖はしろがね春の嶽 蛇笏