和歌と俳句

雛祭

草の戸も住替ろ代ぞ雛の家 芭蕉

綿とりてねびまさりける雛の貌 其角

段のひな清水坂をひと目かな 其角

振舞や下座になをる去年の雛 去来

いかい手でつまみあげたる雛かな 許六

とぼし灯の用意や雛の台所 千代女

ひなの日や蔵から都遷しあり 也有

雛祭る都はづれや桃の月 蕪村

衣手は露の光りや紙雛 蕪村

雛の燈にいぬきが袂かゝるなり 蕪村

たらちねの抓まずありや雛の鼻 蕪村

卯の花はなど咲である雛の宿 蕪村

古雛やむかしの人の袖几帳 蕪村

箱を出るかほわすれめや雛二対 蕪村

雛の宴五十の内侍酔れけり 召波

雛の間にとられてくらきほとけかな 暁台

酔ざめやほのかにみゆるひなのかほ 暁台

葛飾や雛もわたすわたし守 白雄

紙びなや立そふべくは袖の上 太祇

うら店やたんすの上のひな祭 几董

はなさけり古きを祝ふ雛の宿 青蘿

桃さくら其奥床し夜の雛 青蘿

雛祭り娘が桐も伸にけり 一茶

むさい家との給ふやうな雛哉 一茶

御雛をしやぶりたがりて這ふ子かな 一茶

大寒と云顔もあり雛たち 一茶