和歌と俳句

加賀千代女

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雪とけや誠すくなき水の音

ものの葉のまだものめかぬ余寒かな

来たといふまでも胡蝶の余寒かな

ふみ分て雪にまよふや猫の恋

声たてぬ時がわかれぞ猫の恋

むめがかや石もかほ出す雪間より

咲事に日を撰ばずや梅の花

手折らるる人に薫るや梅の花

親しみは遠くて近き月と梅

吹てきて付たようなり梅の花

梅が香や鳥は寝させてよもすがら

梅が香や風のあいあい木にもどり

桃の日や花あとに成先に成

けふあすとあちらむけこちらむけ

ころんでも笑ふてばかりひひな哉

とぼし灯の用意や雛の台所

春降し雪にて雪は消にけり

春雪やふるにもあらずふらぬにも

淡雪や幾筋きえてもとの道

ながれ合ふて一つぬるみや淵も瀬も

ぬるみはやし町のかた野の水くるま

水ぬるむ小川の岸やさざれ蟹

水鏡見るそだちなし蜆取

きじ鳴や身にあまるから声に成

きじ啼て土いろいろの草となる