雪とけや誠すくなき水の音
ものの葉のまだものめかぬ余寒かな
来たといふまでも胡蝶の余寒かな
ふみ分て雪にまよふや猫の恋
声たてぬ時がわかれぞ猫の恋
むめがかや石もかほ出す雪間より
咲事に日を撰ばずや梅の花
手折らるる人に薫るや梅の花
親しみは遠くて近き月と梅
吹てきて付たようなり梅の花
梅が香や鳥は寝させてよもすがら
梅が香や風のあいあい木にもどり
桃の日や花あとに成先に成
けふあすと雛あちらむけこちらむけ
ころんでも笑ふてばかりひひな哉
とぼし灯の用意や雛の台所
春降し雪にて雪は消にけり
春雪やふるにもあらずふらぬにも
淡雪や幾筋きえてもとの道
ながれ合ふて一つぬるみや淵も瀬も
ぬるみはやし町のかた野の水くるま
水ぬるむ小川の岸やさざれ蟹
水鏡見るそだちなし蜆取
きじ鳴や身にあまるから声に成
きじ啼て土いろいろの草となる