和歌と俳句

服部土芳

なつかしき人やあまたにとし明

松に添ふ梅とや老の初あした

名代の鶴いさぎよしみづ祝ひ

草の戸に文字三つ積て蔵開き

萬歳にあはれや老の拍子ぬけ

梅になれ木の端につく餅の花

かげろふやほろほろ落る岸の砂

梅散るや糸の光の日の匂ひ

ちる花に握る手を出す

帯解て吹して涼し山の上

淋しさはどこのふりやら単物

夜目にのみ扇涼しき光り哉

柿の葉の風砕たるすずみかな

蚊の声やもち搗内の一夜酒

わすれずに居るか鹿の子の袋角

行 々子鳴や夜川の笠の端

夜や更る蛍の影のぎやうぎやうし

梧の葉に光り広げる かな

包丁のうしろ明りや初がつを

懐へおつるとひやり栗の花

家建てまた若竹のそよぎかな

窓に望む萱草暑し夕附日