なつかしき人やあまたにとし明ぬ
松に添ふ梅とや老の初あした
名代の鶴いさぎよしみづ祝ひ
草の戸に文字三つ積て蔵開き
萬歳にあはれや老の拍子ぬけ
梅になれ木の端につく餅の花
かげろふやほろほろ落る岸の砂
梅散るや糸の光の日の匂ひ
ちる花に握る手を出す蕨哉
帯解て吹して涼し山の上
淋しさはどこのふりやら単物
夜目にのみ扇涼しき光り哉
柿の葉の風砕たるすずみかな
蚊の声やもち搗内の一夜酒
わすれずに居るか鹿の子の袋角
行 々子鳴や夜川の笠の端
夜や更る蛍の影のぎやうぎやうし
梧の葉に光り広げる 蛍かな
包丁のうしろ明りや初がつを
懐へおつるとひやり栗の花
家建てまた若竹のそよぎかな
窓に望む萱草暑し夕附日