和歌と俳句

餅花 繭玉

餅花や迦葉の笑しおさな顔 言水

餅花や灯立て壁の影 其角

梅になれ木の端につく餅の花 土芳

餅花の賽は鯛より大きけれ 虚子

餅花と女房に狭き帳場かな 虚子

繭玉や店ひろびろと船問屋 鬼城

餅花や正月さむき屋根の雪 蛇笏

餅花に髪ゆひはえぬ山家妻 蛇笏

餅花や閾劃然と台所 青畝

餅花に朝の時計やかちかちと 青畝

餅花の影ふえゆるる畳かな 爽雨

餅花の壁影消して人立てり 泊雲

はでやかな大しだれなる餅の花 青畝

餅花や庵どつとゆる山颪 蛇笏

餅花に灯繞る夜の静寂かな 月二郎

餅花や夕月はやも軒の端に 青邨

繭玉や夕はやけれど灯しけり 素十

繭玉の揺るるあしたもあさつても 夜半

繭玉に寝がての腕あげにけり 不器男

餅花やもつれしままに静まれる たかし

餅花や捨てんとしつつ美しき たかし

なゐ止んで繭玉いろを競ひけり 鷹女

繭玉のさくら色より明けにけり 鷹女

餅花に宿坊の炉のけむり絶ゆ 蛇笏

繭玉に燈明の炎を感じけり 蛇笏

餅花のしだるる中の小判かな 石鼎

紅白の餅花なんど神さびて 石鼎

まゆ玉に鴛鴦浮く水の遠きかな 万太郎

繭玉の鏡にひびく光りあり 蛇笏

まゆ玉のことしの運をしだれける 万太郎

繭玉を炉辺にもすこし十四日 蛇笏

まゆ玉にたちきりがたきうれひあり 万太郎

まゆ玉に小判なにかと光りけり 万太郎

まゆ玉や人のこゝろの照りかげり 万太郎

まゆ玉をうつせる昼の鏡かな 万太郎

まゆ玉のさそへる梅の香なりけり 万太郎

まゆ玉に畳ほのめく青さかな 万太郎

まゆ玉や一度こじれし夫婦仲 万太郎

まゆ玉に猫のおとろへあはれなり 万太郎

まゆ玉やともれば慕ふおのが影 万太郎

まゆ玉のしだれのかげにひそむ神 万太郎

めでたさは、まづ、まゆ玉のしだれより 万太郎

まゆ玉やあはれ一人のものおもひ 万太郎

まゆ玉やつもるうき世の塵かるく 万太郎

繭玉にへらへらうすき千両箱 風生

飛騨に帰りて餅花の下畏れ 静塔

餅花や飛騨の高窓何か見せ 静塔

餅花や命となりし遺影なる みどり女

餅花や静かなる夜を重ねつつ みどり女

餅花の一つ一つの柔かさ 風生