和歌と俳句

初詣

口開いて矢大臣よし初詣 青畝

初詣雪見事なる太鼓橋 花蓑

母としてねぎごと多し初詣 みどり女

階に御鬮のちりや初詣 橙黄子

初詣小さき宮の神仏 かな女

初詣帝釈さまのよもぎもち 青邨

石段に一歩をかけぬ初詣 虚子

山道の掃いてありたる初詣 風生

石段に沿ふ那智村や初詣 爽雨

神近き大提灯や初詣虚子

神慮いま鳩をたゝしむ初詣 虚子

初詣誰にともなき土産物 花蓑

夜風添ふ篝の火の粉初詣 風生

初詣よその母子をなつかしみ 風生

人に恥ぢ神には恥ぢず初詣 虚子

鳩舞へる行手の宮や初詣 花蓑

ぬかづきて我も神の子初詣 花蓑

随身の美男に見ゆ初詣 しづの女

種子明す手品師も居し初詣 しづの女

神の矢のましろきを受けむ初詣 青邨

杉の根の高きに衛士や初詣 爽雨

簪のゆれつゝ下る初詣 青邨

石段を下るが嬉し初詣 青邨

御帷の御裾長や初詣 青畝

粛々と群聚はすゝむ初詣 虚子

子を抱いて石段高し初詣 立子

江の島へ渡りゆく人初詣 立子

古馬車を拾ひ得たりや初詣 たかし

初詣神慮は測り難けれど 虚子

宝庫番と暮れてまかるや初詣 しづの女

ちりひぢの旅装かしこし初詣 しづの女

神を畏れ人をゆかしみ初詣 風生

初詣風つのるさへよしと思ふ 

初詣ことしのひかり射さぬ間を 

水手洗の杓の柄青し初詣 久女

雪解けの雫ひまなし初詣 久女

降りやみし薄雪惜み初詣 夜半

機関車は裾も湯げむり初詣 誓子

行く限り鉄路かがよふ初詣 誓子

初詣終へ来てなほも伊勢駛る 誓子

山迫り来て飛ぶ雪や初詣 蕪城

参道の直なる歩み初詣 爽雨

日本がここに集る初詣 誓子

持船の絵馬を見に来る初詣 誓子

石荒き御垣内まで初詣 誓子

根性を授からんとぞ初詣 風生

下向路の泉香にたち初詣 爽雨

胴太の神馬を佳しと初詣 誓子

神橋のことに飛雪裡初詣 爽雨

幾泉見て初詣深大寺 爽雨

それぞれの杉に天涯初詣 爽雨

奥社へは氈苔の磴初詣 爽雨

にくからぬ深大寺蕎麦や初詣 秋櫻子