和歌と俳句

福寿草

蘭鉢は雪を持らん福寿艸 言水

花よりも名に近づくや福寿草 千代女

福寿草まだ手もをけぬ所より 千代女

朝日さす弓師が店や福寿草 蕪村

ひともとはかたき莟やふく寿艸 召波

何もなき床に置きけり福寿草 虚子

水入の水をやりけり福寿草 子規

煖炉たく部屋暖に福寿草 子規

光琳の屏風に咲くや福寿草 漱石

福寿草咲いて筆硯多祥かな 鬼城

陽微動福寿草僅かに莟む 泊雲

禰宜の子に秀でし歌人福寿草 櫻坡子

晶子
いと小き筍めきし塔にある閻浮檀金の福寿草かな

島田髷結ひ馴らすなり福寿草 風生

赤彦
あしたより日かげさしいる枕べの福寿草の花皆開きけり

赤彦
朝日かげさしの光のすがしさや一群だちの福寿草の花

福寿草一鉢置けば座右の春 たかし

取散らす几辺なれども福寿草 たかし

日の障子太鼓の如し福寿草 たかし

正月も古りつつ福寿草たもつ たかし

茂吉
福寿草を縁のひかりに置かしめてわが見つるときに心は和ぎぬ

福寿草紙風船とあることも 汀女

掛物に十二ヶ月や福寿草 青畝

そろばんを弾く音はも福寿草 万太郎

一花や洞然として福寿草 青畝

福寿草掘るとて兵ら野をさがす 素逝

福寿草遺産といふは蔵書のみ 虚子

文書くもかごとも日向福寿草 汀女

片づけて福寿草のみ置かれあり 虚子

塵の世の塵のうるさき福寿草 万太郎

青丹よし寧楽の墨する福寿草 秋櫻子

筆の穂の長いのが好き福寿草 夜半

頼もしき二十七顆の福寿草 夜半

福寿草平均寿命延びにけり 草城

風邪の眼にかがよふ黄あり福寿草 たかし

膝もとの日の明るさや福寿草 たかし

おのづから老いて足らへり福寿草 草城

妻の座の日向ありけり福寿草 波郷

足の痛み時には忘れ福壽草 みどり女

福壽草悲喜の話の中に咲く みどり女

金の辨こぞりて開く福壽草 みどり女

佳き鉢に替へてひらきぬ福寿草 秋櫻子

福寿草十花燦たる鉢一つ 秋櫻子

福寿草襖いろはにほへとちり 青畝