和歌と俳句

注連飾り

出るに入るにせばい事なし門かざり  t来山

春立とわらはも知やかざり縄 芭蕉

奥山や人こぬ家の門かざり 子規

めでたさや飾りの蜜柑盗まれて 子規

古鍬を研ぎすましたる飾かな 鬼城

氷雪裡輪飾かけて固き戸ぞ

お水屋やはさらほさらと風飾 青畝

御佛に尼が掛け居るかざりかな 虚子

宿院の世に古る炉辺の飾りかな 蛇笏

あまりたる輪飾かくるところがな 夜半

はなやぎて煙れる注連や竃神 蛇笏

水門の扉に吹かれる飾かな 悌二郎

いみじきは砲車の注連をうたひたる 悌二郎

自動車も輪飾かざつて走る 山頭火

一管の笛にもむすぶ飾りかな 蛇笏

注連はるや神も仏も一つ棚 みどり女

仰ぎ見る大〆飾出雲さび 久女

巨いさや雀の出入る〆飾 久女

輪飾のかけられてある杭かな 青邨

日かげりて輪飾青くなりにけり 草城

輪飾を掛けて使はず外厠 たかし

輪飾に海の日の来てあたりけり 万太郎

輪飾や夢の間惜しき三ヶ日 万太郎

断崖の下に輪飾の舟すこし 秋櫻子

枝にかけかりそめめける飾かな 風生

輪飾に壁をいたはる心かな 石鼎

輪飾を掛けし其他は総て略 たかし

数奇屋あり輪飾かけてあけはなつ 秋櫻子

注連かけてふるき具足を飾りたる 悌二郎

しめかざりして谷とほき瀑の神 蛇笏

注連かけて耻づることなく庵せり 青畝

輪飾のかたまり合うて燃えにけり 素十

歳々の輪飾いよいよ余生なり 

喞筒の井輪飾かけて深し深し 誓子

輪飾はとれて柱の掛暦 たかし

あまゆるは風の水光注連飾り 蛇笏

輪かざりにさすが楽屋の行儀かな 万太郎

月夜にてわが影仄か飾りの扉 蛇笏

輪かざりやすでに三日の隙間風 万太郎

輪かざりにきこゆるピアノラヂオかな 万太郎

洗はれて櫓櫂細身や注連飾り 林火

輪かざりやなまじやみたる三ヶ日 万太郎

輪飾や夢の間すぎし三ヶ日 万太郎

部屋鏡輪飾の裏生写し 誓子

輪飾のゆがみし海士の門を過ぐ 青畝