正月や震災まへのまゝの寺
元日やうすく置きたる庭の霜
わかくさのいろも添へたり切山椒
つゝましく羽織著なせる春著かな
初日記何ごとも世ははるかなり
ふりかけて雪すぐやみし二日かな
旅さきの消息とゞく三日かな
老の箸しづかに薺粥啜る
初場所やわすれは措かず信夫山
めでたさは、まづ、まゆ玉のしだれより
まゆ玉やあはれ一人のものおもひ
まゆ玉やつもるうき世の塵かるく
松納格子のうちのはや灯る
うぐひすのことしまだ来ず小正月
小豆粥身貧にうまれつきしかな
元日の句の龍之介なつかしき
元日の梅ほころびし二三輪
墓原の元日しまのひかりかな
輪飾や夢の間すぎし三ヶ日
読初や読まねばばらぬものばかり