和歌と俳句

杉田久女

元旦や束の間起き出で結び髪

松の内社前に統べし舳かな

松の内海日に荒れて霙れけり

松とれし町の雨来て初句会

正月や胼の手洗ふねもごろに

初凪げる湖上の富士を見出でけり

凧を飾りて子等籠りとるかるたかな

胼の手も交りて歌留多賑へり

書初やうるしの如き大硯

縫初の糸の縺れをほどきけり

松の内を淋しく籠る今年かな

初凪げる和布刈の磴に下りたてり

眉引も四十路となりし初鏡

元旦の埠頭に瀬戸の舟つけり

水手洗の杓の柄青し初詣

雪解けの雫ひまなし初詣

仰ぎ見る大〆飾出雲さび

巨いさや雀の出入る〆飾

神前に遊ぶ雀も出雲がほ

あだ守る筑紫の破魔矢うけに来し

紫の雲の上なる手毬唄