和歌と俳句

富安風生

島田髷結ひ馴らすなり福寿草

前髪に落ち来る羽子を打返す

渡守正月の靴を穿いてみし

門松やあひだあひだの枯柳

春著かな両手に抱いて重き袖

蓬莱を掛けてアトリエ新しく

出初式梯子の空の上天気

冬霧のかゝる上野や出初式

初富士を漁師の中に拝みけり

道の辺や羽子沈みゐる芹の水

羽子板や母が贔屓の歌右衛門

国許の母が来て居て二の替

腕きゝの若手揃ひの二の替

一月は「暫」の絵や初暦

獅子舞の大きな門をはひりけり

松立てゝ漂うてをる小舟かな

鯨船松飾してかかりをり

うらじろの剪りこぼれをる山路かな

万歳の三河の国へ帰省かな

初富士や茶山にかくれなし

初富士や垣ぞひ行けば垣の上

初富士の大きかりける汀かな

廂より垂れたる松の初雀