和歌と俳句

蓬莱 ほうらい

蓬莱に聞かばや伊勢の初便 芭蕉

蓬莱にかけてかざるや老の袖 去来

蓬莱に見るや浮世の慾ぞろへ 也有

蓬莱に南無南無といふ童哉 一茶

蓑笠を蓬莱にして草の庵 子規

動きなき蓬莱山の姿哉 子規

蓬莱に貧乏見ゆるあはれなり 子規

蓬莱や上野の山と相対す 子規

蓬莱に一斗の酒を尽しけり 子規

蓬莱に初日さし込む書院哉 漱石

蓬莱に徐福と申す鼠かな 虚子

蓬莱や海老かさ高に歯朶隠れ 碧梧桐

蓬莱を掛けてアトリエ新しく 風生

雲ふかく蓬莱かざる山廬かな 蛇笏

伊勢蝦に懸蓬莱のうすみどり 蛇笏

蓬莱を枕上なる寝覚かな 喜舟

蓬莱の千古のみどり掛けにけり 喜舟

蓬莱に壁を尊む心かな 石鼎

橙と二穂の稲を蓬莱に 石鼎

蓬莱に我が穂の春を祝ぎにけり 青畝

蓬莱や東にひらく伊豆の海 秋櫻子

蓬莱の瑞穂の國の穂の長さ 青畝

蓬莱のひかげかづらの末までも 青畝

蓬莱のしたり尾長く傘壽の賀 風生

蓬莱をわすれぬ宿や伊豆の奥 秋櫻子