小林一茶
花の散る拍子に急ぐ小鮎哉
花ちるや権現様の御膝元
死支度致せ致せと桜哉
蛤の芥を吐かする月よかな
散りがての花よりもろき泪哉
我春も上々吉よ梅の花
物売を梅からよぶや下屋敷
蓬莱に南無南無といふ童哉
壁の穴や我初空もうつくしき
初空の色もさめけり人の顔
人の親几巾を跨で通りけり
番町や夕飯過の几巾
初空へさし出す獅子の首哉
辻謳几巾も上ていたりけり
梅さくや平親王の御月夜
三日月やふはりと梅にうぐひすが
鍬のえに鶯鳴や小梅村
陽炎や道灌どのの物見塚
むつましや生れかはらばのべの蝶
蝶とぶやしなののおくの艸履道
象潟や櫻を浴てなく蛙
青天に産声上る雀かな
赤馬の鼻で吹けり雀の子
黒土や艸履のうらも梅花