木々おのおの名乗り出たる木の芽 哉
三文が 霞見にけり遠眼鏡
陽炎やむつましげなるつかと塚
行春の町やかさ売すだれ売
いつ逢ん身はしらぬひの遠がすみ
剃捨て花見の真似やひのき笠
畠打が焼石積る夕べかな
父ありて母ありて花に出ぬ日哉
陽炎に敷居を越る朝日哉
初夢に古郷を見て涙哉
窓明て蝶を見送る野原哉
遠里や菜の花の上のはだか蔵
元日やさらに旅宿とおもほへず
梅がかに障子ひらけば月夜哉
朧朧ふめば水也もよひ道
門前や何万石の遠がすみ
几巾青葉を出つ入つ哉
塚の花ぬかづけば古郷なつかしや
蛙鳴き鶏なき東しらみけり
松そびへ魚をどりて春を惜む哉
蝶一つ舞台せましと狂ふ哉
振向ばはや美女過る柳哉