和歌と俳句

後拾遺集 良暹法師
みがくれてすだくかはづのもろ聲にさわぎぞわたる井手のうき草

新古今集・雑歌 前大納言忠良
をりにあへばこれもさすがにあはれなり小田のかはづの夕暮れの聲

西行
ま菅おふる山田に水をまかすれば嬉しがほにも鳴く蛙かな

西行
みさびゐて月も宿らぬ濁江にわれすまむとて蛙鳴くなり

有家
追風にすだく河づのもろ声も浪も寄り来る井手の川水

家隆
谷水の岩もる音はうづもれてすだく河づの声のみぞする

定家
を山田の水のながれをしるべにてせきいる ゝなへになくかはづかな

定家
みくりはふ汀のまこもうちそよぎかはづ鳴くなり雨のくれ方

定家
苗代にかつ散る花のいろながらすだくかはづの聲ぞながるる

定家
ほのかなる枯野のすゑのあらを田にかはづも春の暮うらむなり

良経
雨そそぐ池のうきくさ風こえて波と露とにかはづ鳴くなり

実朝
春ふかみ花ちりかかる山の井のふるき清水にかはづなくなり