岩の間にうづくまる春の潮かな 子規
春潮や海老はね上る岩の上 虚子
音たてて春の潮の流れけり 虚子
ひたひたと春の潮打つ鳥居哉 碧梧桐
春潮や巌の上の家二軒 虚子
春の潮鳴るや社務所の日の障子 風生
春の潮先帝祭も近づきぬ 虚子
春潮に浮びて険し城が島 秋櫻子
春潮に揺れつゝつゞく小魚かな 爽雨
春潮に群れ飛ぶ鴎縦横に 久女
佇めば春の潮鳴る舳先かな 久女
春潮に流るる藻あり矢の如く 久女
春潮に縺るる纜の一ところ 播水
春潮といへば必ず門司を思ふ 虚子
春潮に海女の足掻きの見えずなる 誓子
新船卸す瀬戸の春潮とこしなへ 久女
春潮の泡網の如くなりて消ゆ 花蓑
春の潮富士のとがりは鋭くあれど 悌二郎
茂吉
悲しみてひとり来たれる現身を春の潮のおとは消たむか
春潮や浦ながの水沫さまざまに 石鼎
春潮や浪ひけば吐く巌根水 石鼎
春潮や冬にも見たる巌房藻 石鼎
乳児匐はせてあそぶけびんや春の汐 石鼎
ぎくぎくと乳のむあかごや春の汐 石鼎
春潮やわが総身に船の汽笛 誓子
満ちくればすみれ色なり春の潮 鷹女
春潮や水藻のごとき海女の髪 鷹女
春の潮岩門押しひらき激ち入る 秋櫻子
群岩に春潮しぶき鰐いかる 久女
春潮の渚に神の国譲り 久女
春潮に真砂ま白し神ぞ逢ふ 久女
春潮からし虚偽のむくいに泣く兎 久女
春潮に神も怒れり虚偽兎 久女
春潮のさむき海女の業を見る 多佳子
春潮や生簀曳きゆくポツポ船 鳳作