和歌と俳句

躑躅 つつじ

万葉集・人麻呂歌集
栲領巾の 鷺坂山の 白つつじ 我れににほはに 妹に示さむ

好忠
山姫の 染めてはさぼす 衣かと 見るまでにほふ 岩つつじかな

好忠
たくひれの 鷺坂岡の つつじ原 色照るまでに 花咲きにけり

後拾遺集 和泉式部
岩つゝじ 折りもてぞ見る せこが着し くれなゐ染めの 色に似たれば

後拾遺集 藤原義孝
わぎもこが 紅染めの 色とみて なづさはれぬる 岩つつじかな

金葉集 摂政家参河
入日さす ゆふくれなゐの 色みえて 山下てらす 岩つつじかな

経信
花の散る なぐさめにせむ 菅原や 伏見の里の  いはつつじ見て

頼政
けふぞ見る さぎさか山の 白躑躅 いかで佐保姫 染め残しけむ

西行
はひつたひ 折らでつつじを 手にぞとる さかしき山の とり所には

西行
躑躅咲く 山の岩かげ 夕ばえて をぐらはよその 名のみなりけり

寂蓮
ときは木の かさなる谷の 岩躑躅 いづこよりさす ひかげなるらむ

定家
こよひ寝て しばしもなれむ ときは山 いは躑躅さく 峯のかよひぢ

定家
いはつつじ いはでやそむる しのぶ山 心のおくの 色をたづねて

定家
たつた川 いはねのつつじ かげ見えて なほ水くぐる 春のくれなる