白秋
幽かなれば人に知らゆな雀の巣雀ゐるとは人に知らゆな
白秋
雀のみ住みてささ啼く雀の巣卵守るとは人に知らゆな
白秋
春は軒の 雀が宿の 巣藁にも 紅き毛糸の 垂れて見えけり
白秋
月読の 光の紅く 射すところ 雀は啼けり 軒の古巣に
白秋
巣の中に いくつ卵を まもればか 雀は寝ぬぞ 春の月夜に
雀の巣浮間の橋の橋桁に 花蓑
石鼎
巣雀の声さへこだましてきこゆ
虚子
藁さがるけふは二筋雀の巣
誓子
雀の巣われは田草の穂を手にす
誓子
巣作ると雀のなせることかなし
誓子
高き巣に鳴ける雀と我と暮る
誓子
暮れかかる子なき吾家の雀の巣
誓子
何事を欣こぶこゑぞ巣の雀
誓子
ゆふべの燈机上照らせば雀巣に
誓子
巣の雀家居の吾を又覗く
誓子
物書ける吾を信じて巣の雀
誓子
みだれつつ藁は雀の巣を守る
多佳子
雀の巣かの紅絲をまじへをらむ
多佳子
静臥の上巣つくり雀しやべりづめ
悌二郎
知られずとゐて見守らるる雀の巣
誓子
高き巣に鳴ける雀と我と暮る