和歌と俳句

桜鯛

津国の何五両せん櫻鯛 其角

腸を牡丹と申せさくら鯛 几董

俎板に鱗ちりしく桜鯛 子規

大皿に二枚買ひけり桜鯛 石鼎

春雷や暗き厨の桜鯛 秋櫻子

砂まみれの桜鯛一々に鉤を打たれた 碧梧桐

さくら鯛砂へ刎ねたるいさぎよさ 草城

庖丁の含む殺気や櫻鯛 草城

こまごまと白き歯並や桜鯛 茅舎

桜鯛かなしき目玉くはれけり 茅舎

桜鯛醜の魚等にかゞやける 草城

ぬれ笹をとけばすなはち桜鯛 野風呂

桜鯛絵島を見よと誘はれて かな女

砂の上曳ずり行くや桜鯛 虚子

高松にとまりかさねてさくら鯛 野風呂

大いなる鱗飛び散る桜鯛 波津女

庖丁を取りて打撫で桜鯛 たかし

桜鯛料る尾が飛び鱗散り たかし

たばしたる先づ眼福や櫻鯛 虚子

よこたへて金ほのめくや櫻鯛 青畝

盥噛んで瀬戸より到りさくら鯛 爽雨

櫻鯛到りて祝ぎは厨より 爽雨

庖丁の刃のきらめきや櫻鯛 万太郎