広縁や囀り合へるみぎひだり
囀や銀貨こぼれし頭陀袋
囀や拳固くひたき侍者恵信
燕や烈風に打つ白き腹
揚雲雀草の庵の厨より
漣の中に動かず蛙の目
こまごまと白き歯並や桜鯛
桜鯛かなしき目玉くはれけり
蜂の尻ふわふわと針をさめけり
蜆舟石山の鐘鳴りわたる
菜の花の岬を出でて蜆舟
梅咲いて母の初七日いい天気
梅咲いて鉄条網の倒れあり
椿道綺麗に昼もくらきかな
桃の里家鴨に藍を流しけり
木蓮の落ちくだけあり寂光土
花隠れ呪文きこゆるお滝様
初花や竹の奥より朝日かげ
花明り蛙もなかぬ心字池
山高みこのもかのもに花の雲
花の雲鳩は五色に舞ひあそぶ
花吹雪滝つ岩ねのかがやきぬ
藤波の松より竹へ清閑寺
銀杏の芽み空に飛べば白鳩も
大銀杏無尽蔵なる芽ふきけり