和歌と俳句

川端茅舎

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甃あら咲き萌え

蝟の如く怒れる鳩や八重桜

花の雲杉の梢に一とちぎれ

紀三井寺漁火の上なる春灯

蕩蕩と旅の朝寝や和歌の浦

絶壁にもたれて杣の今朝の春

山葵の芽水ちよろちよろと喜ばし

山葵の芽青き心臓石に触れ

深川の濁れる春の日は酸つば

乳母車降りて転びぬ暖かき

春の土に落とせしせんべ母は食べ

玉椿空海照りて界なし

大山はナポレオン帽春の雲

玉椿沖の高さに盛りあがる

の甘えたりしが後と静か

木蓮 に杉の梢の皆禿

木蓮や蒼天蒼天夜にはあらず

花吹雪金の立札両大師

猫の恋月に嘯くとはいへど

花杏受胎告知の翅音びび

梅の丘を削りて芹の田を埋む

蒲公英や鷺の白光御空より

つくづくし西湖の塔に似たるかな