和歌と俳句

立春

はる立や新年ふるき米五升 芭蕉

春たちてまだ九日の野山かな 芭蕉

春立や見古したれど筑波山 一茶

門々の下駄の泥より春立ぬ 一茶

春立や菰もかぶらず五十年 一茶

春立や二軒つなぎの片住居 一茶

春立や愚の上に又愚にかへる 一茶

春立つや昼の灯くらき山社 子規

落葉焚いて春立つ庭や知恩院 虚子

春立つや六枚屏風六歌仙 虚子

鳩鳴いて烟の如き春に入る 漱石

春立つや峯に対して牧の埒 蛇笏

焼印や金剛杖に立てる春 放哉

立春や梵鐘へ貼る札の数 蛇笏

かゝる夜の雨に春立つ谷明り 石鼎

立春や香煙とゞく絵天井 喜舟

晶子
春立ちぬ夢多き身はこの日より髪に薔薇の油をぞ塗る

立春や厚朴にそそぎて大雨やむ 蛇笏

雨の中に立春大吉の光あり 虚子

オリヲンの真下春立つ雪の宿 普羅

雪五度立春大吉の家にあり 普羅

立春の暁の時計鳴りにけり 普羅

立春の大蛤をもらひけり 石鼎