和歌と俳句

白魚

白魚やさながらうごく水の色 来山

藻にすだく白魚やとらば消ぬべき 芭蕉

白魚や黒き目を明く法の網 芭蕉

白魚をふるひ寄せたる四つ手かな 其角

白魚に余寒の海やいせ尾張 召波

しら魚やつきまとはるゝ海の塵 召波

しらうをの骨身を浹すかゞりかな 暁台

しら魚やうき世の闇に目をひらき 暁台

美しや春は白魚かいわり菜 白雄

白魚やきよきにつけてなまぐさき 太祇

しら魚は梅につれだつ盛哉 青蘿

しらうをの雫や春の薄氷 青蘿

白魚やそめ物洗ふすみた川 子規

濁り江の闇路をたどる白魚哉 子規

白魚は雫ばかりの重さ哉 子規

白魚や椀の中にも角田川 子規

白魚に己れ恥ぢずや川蒸気 漱石

白魚や美しき子の触れて見る 漱石

ふるひ寄せて白魚崩れん許りなり 漱石

白魚並ぶ中の砕けてゐたり 碧梧桐

二人で物足らぬ三人になつて白魚 碧梧桐

眼前の波に藻屑や白魚網 石鼎

笊の目につぶれつきゐし白魚かな 石鼎

汁冷えて椀に沈める白魚かな 石鼎

白魚くむたびに廻れる舳影かな 蛇笏

白魚の小さき顔をもてりけり 石鼎

明るさや白魚たばしる月の網 花蓑

白魚網はねこぼれたる一二匹 花蓑

白魚に水おもくあげし四つ手かな 淡路女

憲吉
春さむき入江にあそび白魚の生きてわかきを酢につけて食ふ

町空のくらき氷雨や白魚売 不器男

白魚のかぼそきいのちをはりぬる 草城

白魚の漁火となん雪の中 花蓑

白魚の夢に大船うごきけり かな女

白魚舟古き景色をつくりけり 風生

白魚にさからふ水の流れけり 青邨

篝火に飛び込む雪や白魚舟 たかし

白魚に旅行く朝の明けはなれ 楸邨

雨に獲し白魚の嵩哀れなり 秋櫻子

白魚火や国引せしといふ海に 青畝

白魚網一番星の閃めきに 青畝

白魚舟片々蓑を着てかへる 秋櫻子

点の目の白魚に任す旅愁かな 不死男

白魚のまことしやかに魂ふるふ 青畝

海暮れて白魚月夜くまなけれ 青畝

白魚和満月もまた賜ひけり 林火

白魚の目が見しものを思ひをり 楸邨

水門に遠き筑波や白魚舟 秋櫻子

白魚飯酒の香立つをよろこべり 秋櫻子

白魚飯けふも炊くなり老ふたり 秋櫻子

白魚や厨あづかることは幸