加舎白雄
出ばやな籬の野べの麦踏に
水鳥の帰ていづこ種おろし
猫の恋六日とし越ふけにけり
山里や馬槽にきじの歩みよる
鴬に圃すこしある屋敷かな
うぐひすの今朝たく柴にとまりけり
巣燕に雑巾かけし柱かな
巣乙鳥の下に火をたく雨夜かな
はしり帆の帆綱かいくゞるつばめ哉
巣つくるや憎き鴉も親ごゝろ
はつ蝶のちゐさくも物にまぎれざる
蝶とぶやあらひあげたる流しもと
蜂の巣もひとだのめなるのき端かな
舞すくむ虻や地にそふ影久し
瞬くや旦の小田の蛙ども
美しや春は白魚かいわり菜
土舟や蜆こぼる ゝ水のおと
まてぐしに哀は馬刀のちから哉
若艸や栞にむすぶ古すゝき
富家もまづしき門もうめさきぬ