鴬の隣へ迯てはつねかな
うぐひすやいせ路を出る暦彫
鴬の脛にかゝるや枯かつら
初音して鴬下リぬ臼のもと
うぐひすに松明しらむ山路哉
うぐひすの訛かはゆき若音かな
梅ちるや京の酒屋の二升樽
をちこちや梅の木間のふしみ人
しら梅に余寒の雲のかゝる也
白梅にこはそも氷雨の降日哉
ぬつくりと寐て居る猫や梅の股
耕さぬ人に見らるゝ野梅哉
木に残るこゝろや手折梅の花
恋々として柳遠のく舟路哉
若柳枝空ざまにみどりかな
わたりふたつ見えて夕日の柳哉
寒かりし月を濁らす柳かな
比良の雪大津の柳かすみけり
犬に迯て庭鳥上る柳かな
老そめてことにめでたき柳かな
しばし見む柳がもとの小鮒市
顔いたき風のよそ目に柳哉
手を添て引せまいらす小松哉
まないたの七野に響くわかなかな
七草に鼠が恋もわかれけり