和歌と俳句

八十村路通

元朝や何となけれど遅ざくら

つみすて ゝ踏付がたき若な

彼岸まへさむさも一夜二夜哉

有明やさくらの浪にずんぶりと

ころもがへや白きは物に手のつかず

いらいらと暑いに見やれ雲が出た

夏の日や一息に飲酒の味

賑にちまきとくなり座敷中

鮎の瀬を越す田楽を蓼酢かな

もろとりのをとなひ低し桐の花

芥子痩てただ中なかに美人草

ここちよや御座も早藺の旅の宿

ことし竹も淋しき秋の始哉

芭蕉葉は何になれとや秋の風

下枝にかまへて啼や秋の蝉

うらやまし君が木曾路の橡の粥

萩垣にことしの の盛りかな

蘆の穂やまねく哀れよりちるあはれ

残菊はまことの菊の終りかな

何と世を捨も果すや藤はかま

りんだうの花かたぶきて殊勝さよ

蓮の実や抄て腐れて秋の水

はつ雪や先草履にて隣まで

きゆる時は氷もきえてはしる也

鳥共も寝入てゐるか余吾の海

いねいねと人にいはれつ年の暮