霜朝の嵐やつつむ生姜味噌
柳にはふかでおのれあらしの夕燕
汐干くれて蟹が裾引くなごり哉
舟炙るとま屋の秋の夕哉
松風の里は籾するしぐれ哉
はぜつるや水村山郭酒旗の風
簾に入て美人に馴る燕かな
萍に何を喰うやら池の鴨
正月も身は泥のうなぎ哉
よしなしやさでの芥とゆく蛙
蕗のとうほうけて人の詠かな
盆迄は秋なき門の灯籠哉
木がらしの吹行うしろすがた哉
つとめよと親もあたらぬ火燵哉
秋風の心動きぬ縄すだれ
鈴鴨の声ふり渡る月寒し
庵の夜もみじかくなりぬすこしづつ
かくれ家やよめ菜の中に残る菊
我もらじ新酒は人の醒やすき
立いでて後あゆみや秋の暮
鴨おりて水まであゆむ氷かな
古足袋の四十に足をふみ込ぬ
花に風かろくきてふけ酒の泡
樗佩てわざとめかしや芝肴
元日や晴てすずめのものがたり