君が春蚊帳は萌黄に極りぬ
はつ春のめでたき名なり賢魚々
初夢や浜名の橋の今のさま
弥勒まで御世や兎の御吸物
若菜つむ跡は木を割畑哉
何事もなしと過行 柳哉
つばきまで折そへらる ゝさくら哉
あかつきをむつかしさうに鳴蛙
なら漬に親よぶ浦の塩干哉
一井柿の木のいたり過たる若葉哉
声あらば鮎も鳴らん鵜飼舟
撫子や蒔絵書人をうらむらん
ちからなや麻刈あとの秋の風
はすの実のぬけつくしたる蓮のみか
かげろふの抱つけばわがころも哉
はる風に帯ゆるみたる寐貌哉
もの数寄やむかしの春の儘ならん
花ながら植かへらるゝ牡丹かな
よの木にもまぎれぬ冬の柳哉
夕月や杖に水なぶる角田川
天龍でた ゝかれたまへ雪の暮
行年や親にしらがをかくしけり
妻の名のあらばけし給へ神送り
散花の間はむかしばなし哉
たうとさの涙や直に氷るらん