和歌と俳句

越智越人

何とやらおがめば寒し梅の花

君が代やみがくことなき玉つばき

ちやのはなやほるゝ人なき霊聖女

ちるときの心やすさよ米嚢花

君が代や筑摩祭も鍋一ツ

稗の穂の馬迯したる気色哉

うらやましおもひ切時猫の恋

啼やいとど塩にほこりのたまる迄

稲づまや浮世をめぐる鈴鹿山

に埋れて夢より直に死んかな

山ぶきのあぶなき岨のくづれかな

清水をむすべば解くる暑さ

へつらへる心ぞあつき夏袴

雪の下名のらで寒し花の色

山寺に米搗く程の月夜哉

茶屋ともの婦夫いさかふ雨の月

雨の月どこともなしの薄あかり

霧はれて桟は目もふさがれず

さらしなや三よさの月見雲もなし

露萩もおるる斗に轡虫

吹風に唇うるむ木槿かな

行燈の煤けぞ寒き雪のくれ