和歌と俳句

加舎白雄

我と世をのがれん身にも初日影

初がすみきその嶽々たのもしき

万歳の頤ながき旦かな

心こめて筆試ることしかな

うち離し馬も嘶へよ薺の夜

大雪の旦若菜をもらひけり

七種のそろはずとてもいわゐ哉

薺売鮒の釣場をおしへけり

粥草や葛飾舟の朝みどり

かゝり舟岬のまつに子の日せよ

煤ちるやはや如月の台所

春の日を音せで暮る簾かな

簾戸に鯛のこけちる春日哉

ながき日やみちのくよりの片便

永き日や鶏はついばみ犬は寝る

遠浅に小貝ひらふや夕霞

国に添て霞をはこぶうしほ哉

星きへて霞かゝれる檜原哉

うら若き川原蓬はるの風

はるかぜに吹かるゝ鴇の照羽かな