古畑や薺摘行男ども 芭蕉
よもに打つ薺もしどろもどろ哉 芭蕉
一とせに一度つまるる菜づなかな 芭蕉
百人の雪掻しばし薺ほり 其角
きのふより若菜摘そへ薺売り 杉風
濡縁や薺こぼるる土ながら 嵐雪
一きほひ六日の暁や打薺 許六
六日八日中に七日のなづな哉 鬼貫
老の腰摘にもたゝく薺かな 也有
ほとゝぎすわたらぬさきに薺かな 召波
京縞の頭巾で出たり薺うり 暁台
薺売鮒の釣場をおしへけり 白雄
薺うつ都はづれの伏家かな 子規
薺摘んで母なき子なり一つ家 漱石
俎板の染むまで薺打はやす かな女
薺摘むやうしろ荐りに塀雫 泊雲
利玄
なづななづな切抜き模様を地に敷きてまだき春ありここのところに
しののめの窓の燈を消す薺かな 淡路女
ひとり摘む薺の土のやはらかに 汀女
酪農の娘にうす雪やなづな摘 蛇笏
薺つむ帷子雪のふまれけり 蛇笏
潮ざゐの音も薺を打つ音も 石鼎
八方の嶽しづまりて薺打 蛇笏
大嶺よりやまびこかへす薺打 蛇笏