鏡餅多門は鉾とあれ鼠 言水
我宿の春は来にけり具足餅 鬼貫
正月を出して見せうか鏡餅 去来
かがみ餅蜜柑はうまき時分也 許六
鏡餅母在して猶父恋し 暁台
山里は割木でわるや鏡餅 漱石
砕けゆや玉と答へて鏡餅 漱石
ふくよかにすわりめでたし鏡餅 鬼城
つやつやしい鏡餅の粉をはらつてこの手 碧梧桐
新馬尾藻塩ふきたつる鏡餅 石鼎
鏡餅杉の板戸も新しく 立子
お茶の間やラヂオの上の鏡餅 立子
鏡餅暗きところに割れて坐す 三鬼
鏡餅弁天池の石となれ 青畝
山中の雪の玉屋かがみ餅 蛇笏
つぎつぎに子等家を去り鏡餅 楸邨
鏡餅荒山風に任せあり 波郷
鏡餅立山の民麓なり 静塔
舟に据ゑ海へ供へし鏡餅 誓子
扉より歌舞伎幕見ゆ鏡餅 秋櫻子
鏡餅はや二分けの罅走る 誓子
鏡餅昆布が黒き舌垂らす 誓子