子に破魔矢持たせて抱きあげにけり
羽子つくや夕いよいよ雪もよひ
縁に置く代りの羽子の赤ぼかし
切山椒ねぢれたるのも目出度けれ
元旦やいつもの道を母の家
格子戸を出し獅子舞の煙草喫ふ
鏡餅杉の板戸も新しく
江の島へ渡りゆく人初詣
父母の門辺の春をまづ訪ね
母の著る著物なつかし松の門
酒倉のはだか電燈松も過ぎ
お茶の間やラヂオの上の鏡餅
はらからの訪ひつ訪はれつ松の内
年寄れど娘は娘父の春
お使ひの口上上手お年玉
たらちねの声を聞かまし初電話
四捨五入すれば五十と餅を焼く
若水にさぶと雙手やはしけやし
たらちねの老美しや去年今年
わが庵の即ち楠の初明り
初笑ひたしなめつつも祖母笑ふ
初明り静かなるかな時計鳴る
裾まはし茄子紺に染め春著派手
正月の墓参の坂を老姉妹